天文との出会い
第8回 「最近〜今後のボーグ製品」
Writer:中川 昇

《中川昇プロフィール》

1962年東京生まれ。46才。小学3年生で天文に目覚め、以来天文一筋37年。ビクセン、アトム、トミーと望遠鏡関連の業務に従事。現在、株式会社トミーテックボーグ担当責任者。千葉天体写真協会会長、ちばサイエンスの会会員、鴨川天体観測所メンバー、奈良市観光大使。

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地上プリズムEP-1、1.4倍テレコンバーターDG、、ミニボーグ60ED

その後のボーグは、2005年にデジスコファン待望のポロ型の地上プリズムEP-1(右の写真、上から1枚目)、1.4倍テレコンバーターDG(写真2枚目)、ミニボーグファン待望の60ED(写真3枚目)と相次いで新製品を発売しました。さらに2006年には、45EDの後継機種45EDIIを発売。これにより、ミニボーグのラインナップは50、60、45EDII、60EDとバランス良く揃い、シリーズとして一応の完成をみました。一気に普及し始めた一眼デジカメには1.4倍テレコンで対応し、コンパクトデジカメには地上プリズムで対応するという両面作戦は他社のスコープにはないボーグだけの特長で、その汎用性の高さからボーグを選択するお客様も増え始めてきました。

EDレデューサーF4DG(上)とBORG125SDF6の試作品(下)

一方、2006年12月に満を持して発売したEDレデューサーF4DG(左の写真、上)は¥118,000という高価格にも関わらず、ファーストロットの100組が即完売するほどの人気の高さを見せました。その人気の秘密は何でしょうか?それは、現行機種の77EDIIや101EDと組み合わせてF4クラスまで明るくなるという事はもちろんなのですが、すでに多くのボーグユーザーが持っている76ED、77ED、100ED、125EDといったフィルム用に開発された旧型の対物レンズが、デジタル対応の望遠鏡として蘇るという意味合いが大きかったものと推測されます。さらには、他社製の旧型の屈折望遠鏡を所有している方も、このEDレデューサーF4DGと併用することにより、本体を新製品に買い換えることなく、デジタルカメラに使用できるようになるという大きなメリットが評価されたものと思われます。もちろん、F4クラスまで明るくなるということは、撮影枚数が稼げるということになり、それはコマを重ねたり、モザイク加工といった後加工がしやすいということにもつながり、ユーザーのメリットがとても大きくなるわけです。加えて、現在生産中の新製品、BORG125SDF6(写真下)との相性も良いので、このEDレデューサーF4DGと組み合わせると、6群6枚、口径125ミリf488ミリF3.9という、今までにない高性能な撮影レンズが登場することになります。

BORG125SDF6は2007年末の発売予定ですので、ご期待いただければ幸いです。ただ、高価な国産SDレンズを使用しましたので、価格はそれなりになる予定です。この冬のボーナスはこの125SDを選択肢のひとつに加えていただければ嬉しく思います。

他に現在開発中の製品としては、ミニボーグに使える明るいレデューサーがあります。現行のミニボーグ用のレデューサーは非常に高性能ですが、0.85倍とやや暗いので、露出時間がややかかりすぎるという問題がありました。開発中の新型レデューサーはこれを解消するためのもので、0.7倍を切るものになる予定です。性能を落とさないために3枚玉にする予定です。こちらもそれなりの価格になるかと思いますが、どんな高価な望遠レンズよりも高性能になるかと思います。200mmクラスで高性能の望遠レンズをお考えの方には強くお勧めいたします。発売は2007年の秋の予定です。もちろん、他社の同クラスの屈折望遠鏡にも使用可能ですので、眠っていた望遠鏡がこのレデューサーで蘇ることになります。ご期待ください。他にも、ボーグならではの独自性の高いパーツも続々発売予定です。本欄でもその内容をご紹介できるかと思いますので、ご期待いただければ幸いです。

ところで、最近、お客様からよく受ける質問に、「よくこれだけの製品を次々と開発できるもんですね」という質問があります。ボーグは、すでに市場にあるものを引っ張ってきて改良して発売するという手法ではなく、ほとんどがボーグ完全オリジナルの製品です。そういう意味ではボーグは本来のメーカーらしいメーカーということがいえるかと思います。もちろん、オリジナルな分だけリスクは大きくなります。ここで、ボーグの開発の手法を簡単にご紹介したいと思います。手法といってもたいしたことではないのですが、大きく分けて3つの開発パターンがあります。

まず、ひとつは、担当の中川が「これが欲しい」と考えて、後先考えずに試作→生産する場合です。パーツなら図面に2日、試作に2週間、生産に2週間、最短で発案から1ヶ月で発売可能です。幸いなことにこの手法で、大きな失敗は1回もありません。もっともロットが100〜300程度の製品がほとんどなので、失敗しても知れてはいますが・・・。

2つめは、ユーザー様から製品化のご要望があった場合です。これは、さらに大きく2つに分かれます。ひとつは製品化の要望があって、私も「売れる」と判断して製品化するケース、実はこれが一番売れない場合が多いです。失敗が少ないのは、製品化の要望があって、それが私がすぐに売れるとは判断できない場合で、他の人の意見も聞きながら、恐る恐る慎重に製品化したものが意外と売れます。ミニボーグはまさにその好例です。独走や慢心は禁物ということでしょうか。

千葉県柏市で行われた星の写真展

3つめは輸出市場主導の場合です。これは、アメリカ市場等からの強い要望がありますから、もっとも間違いがありません。最近は高橋製作所さんもこの手法が多いと聞いていますが、日本の10倍以上あるといわれているアメリカ市場は、間違っても外れないとても重要な市場です。別の機会に詳しくご案内しますが、ボーグはヒューテック社という極めて優秀な代理店を通じて、全世界に輸出されています。EDレデューサーF4DGや125SDなどはまさにこの手法で開発されたものです。逆にいいますと、それだけ日本市場が縮小してしまったということでもあります。日本市場は、恐らくピーク時の4分の1程度にまで縮小しているかと思います。なぜそこまで望遠鏡市場が縮小してしまったかということについては、いろいろ思うことがありますが、今回は紙数が尽きてしまったので、次回に譲りたいと思います。次回は深刻な国内の望遠鏡市場の問題点と提言、それと(株)トミーテックと千葉天体写真協会が協力して、今年で7回目を迎える天体写真展のご案内をさせていただきたいと思います。

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