「スターダスト」がテンペル彗星をフライバイ観測

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【2011年2月16日 NASA

2月14日、彗星探査機「スターダスト」がテンペル彗星(9P)に178kmまで接近し観測を行った。5年前の探査機「ディープインパクト」による観測以来の変化がとらえられており、短周期彗星の性質を知るうえで貴重なミッションとなった。


(テンペル彗星の最接近画像)

スターダストが撮影したテンペル彗星の最接近画像。数字は最接近からの経過時間。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Cornell)

(2つの探査機が撮影したテンペル彗星の画像)

ディープインパクト(2005年)とスターダストが撮影したテンペル彗星。黄色い矢印付近が、ディープインパクトが行った衝突実験の現場。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Cornell)

(衝突前後のクレーター付近の画像)

衝突前後のクレーター付近。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Maryland/Cornell)

(2つの探査機がとらえた地形の画像)

同じ地形をディープインパクト(上)とスターダスト(下)がとらえた画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Maryland/Cornell)

2月14日午後11時40分(米東部標準時、日本時間では15日午後1時40分)、NASAの彗星探査機「スターダスト」がテンペル彗星(9P)(注1)の核から178kmまで接近フライバイし観測を行った。72枚の画像を撮影したほか、コマ(注2)に含まれるちりや、彗星核の大気のデータを取得した。

テンペル彗星へは2005年7月に探査機「ディープインパクト」も観測のために訪れており、5.5年の公転周期1回分の間に彗星がどのように変化するかを探る初のミッションでもある。

1枚目の画像は接近通過中、矢印の順にテンペルを連続撮影したものだ。最接近の瞬間の前後15秒は彗星核から約245km、前後3秒は185kmの距離からとらえられている。

最接近15秒前の写真には、2005年にディープインパクトが衝突体を落下させたのと同一面がとらえられており、2枚目の画像と同じような2つのクレーターなどの地形が確認できる。最接近3秒前の画像の左半分と、3秒後の画像の大部分は、今回初めてとらえられた領域だ。

3枚目の画像は、ディープインパクトによって作られたクレーター付近をクローズアップしている。

ディープインパクトは衝突実験で飛び散った物質を検出・分析したものの、その物質で見通しが悪くなったためにクレーター内部を詳細に観測することはできなかった。だが今回、スターダストがとらえた右側の画像では、黄色い枠内にうっすらとその痕跡を見ることができる。この人工クレーターは直径150mで、深さの正確な数値は詳細待ちだが、浅いもののようだ。

「飛び散った物質の一部が再度積もって中央丘が形成されています。最新のクレーターの様子を見ると、彗星核の物質があまり硬くなく、もろいことがわかります」(「Stardust-NExT」ミッションの主任研究員Joe Veverka氏)

4枚目の画像は、クレーター近くの台地付近を、ディープインパクトとスターダストの画像で比較したものだ。台地の右端部分(画像右側の黄色い曲線)が徐々に左側方向に侵食されているとみられ、変化の大きい箇所では20〜30mほど削り取られている。また、黄色い四角の箇所では、複数のくぼ地が侵食によって1つにつながっているのが見える。こういった変化は、彗星が太陽に近づく時に彗星核に含まれる揮発性の物質が蒸発することで起こるものだ。

1999年に打ち上げられ60億kmを飛行してきたスターダストは、2004年にヴィルト彗星(81P)のコマの物質を採集、2006年にはそのサンプルを地球に持ち帰ることに成功した。延長ミッション「Stardust-NExT」として実施された今回の観測で燃料が尽きるため、これが最後のミッションとなる。

注1:「テンペル彗星(9P)」 1867年にフランスのテンペルによって発見された。公転周期は5.5年。彗星核の大きさは7.6km×4.9km。

注2:「コマ」 彗星の核から吹き出した中性のガスやダスト(ちり)がぼんやりと見える部分。

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