Ironwood Remote Observatory Hawaii
第15回 「経済動向と天文業界のアフターサービスを憂う」

Writer: Ken Archer氏

《Ken Archerプロフィール》

米国・ハワイ州オアフ島在住。アロハ航空の機長を務めるかたわら、自宅に天文台を建設して以来、その性能向上に力を注いできた。リタイヤ後の今は、天文台の自動制御に関連したビジネスを展開している。ホームページ「Ironwood Observatory」を開設中。


2010年4月のハワイ大学天文学研究所のオープンハウスのようす(1)

(画像1)2010年4月のハワイ大学天文学研究所のオープンハウスにて(Gail Schmidt氏とLaura Cummings氏)

2010年4月のハワイ大学天文学研究所のオープンハウスのようす(2)

(画像2)2010年4月のハワイ大学天文学研究所のオープンハウスにて(質問を投げかけるLaura Cummings氏)

ドーン・ミッションのフィルター取り付けのようす

(画像3)ドーン・ミッションのフィルター取り付けのようす

IROとドーンミッション用の新しいカラーフィルターホイールの画像

(画像4)IROとドーンミッション用の新しいカラーフィルターホイール

)ホルダーに取り付けた、ドーン・ミッションのオリジナルフィルターの画像

(画像5)ホルダーに取り付けた、ドーン・ミッションのオリジナルフィルター

カラーフィルターホイールを取り外す、Reid Archer氏とVishnu Reddy博士の画像

(画像6)カラーフィルターホイールを取り外す、Reid Archer氏とVishnu Reddy博士

ドーンミッションのポスターとスライドショーを見せるReid Archer氏の画像

(画像7)ドーンミッションのポスターとスライドショーを見せるReid Archer氏

NASAのドーンのミッション関連で、私たちは小惑星ベスタの撮像作業を続けています。とはいえ、すでにデータはじゅうぶんに得られていますので、今は空が澄んだ夜のみ撮像を行っています。

ミッションで使われているフィルターは、一般に売られているCCDフィルターとは違います。角の丸い三角形をしているので、特殊なテープで所定の場所に留めてあります。丸い角からはわずかな光も入り込みます。そのため、いかなる光源も画像の質に影響を及ぼしますから、澄んだ月の無い夜こそ撮像のチャンスです。なお、5月の末にはドーンのフィルターホイールを取り替えて、通常の10枚用に戻す予定です。

新規の撮像テストでは、毎晩スケジューラーを使って自動で小惑星捜索を行います。前回もお話したように、ビジネスにつながりそうな問い合わせが舞い込んできています。それは、一晩に最低2回の撮像で、可能なかぎり広い空域を撮像するというものです。目下のところ、毎晩全天の3分の1くらいしかカバーできないと思っています。

得られる画像は、あくまでソフトウェアのテストのためのもので、自動で2枚の画像を処理して、移動する天体がとらえられているかを調べます。この作業は安価な架台にはかなりの負担になるので、テストは1ヶ月に1回しか行いません。もっと多くのテストを行う場合には、性能のいい架台を取り付ける必要があります。

忙しいとはいえ、今年の3月以降、つまり2ヶ月前からは物理的にIROに足を運ばなくなり、すべて順調でこの上ありません。実は、IronwoodドームとIronwood リモート天文台の2つのうち、やはり夜間観測を簡単に始められるのは、リーモート天文台です。

ドームの場合、撮像開始までに1〜2時間はかかります。これは、ドームを日常的に使っていないのも理由の1つで、リモート天文台とは対照的です。また、ハワイではヤモリが厄介で、いつもドームの接触部分や望遠鏡、全天カメラなどを使用前に掃除しなければなりません。

今年のハワイは、エルニーニョが穏やかだったため、雨季は比較的乾燥していました。おかげで、なかなかよい澄んだ夜空に恵まれつつも、反対に水不足となりました。雨季が終わり、気温の高い乾燥した夏へと季節は変わりつつあります。1年間のうちで私が好きな3ヶ月間は3月から6月です。涼しくて通常湿気のない気候は、1年の後半も続きます。

さて、いつもは経済に関する話題には触れませんが、今多くの人が注目していると思いますし、個人的にも、安定したリタイヤ生活を送れるだけのじゅうぶんなお金が得られればと望むばかりです。

過去数年間、私は経済に注目してきました。読者のみなさんも同じでしょう。ご存じのようにアメリカでは景気が後退しており、今やっと回復を始めたところで、マーケットは上昇しつつあります。

過去20年間に各国の金融情勢はより互いに依存する傾向を保ってきたわけですが、国際経済は今互いにしかりとつながりあっていると言えます。

PIIGSとは、現在ヨーロッパで経済状況が異常に悪化した国々(ポルトガルの「P」、アイルランドの「I」、イタリアの「I」、ギリシャの「G」、スペインの「S」)の頭文字です。ギリシャでは対外債務の不履行で大混乱が起き、その影響で金融市場はさらに悪化しました。

過去5年間の間に、私の個人年金の状況は、まるでよく弾むボールのように上下してきました。私は退職後に年金口座にあったお金を投資に当てましたが、現在その価値は落ちています。

2005年にダウ平均は10500、今日は10444で終えました。最高は14400でしたが、過去5年の間に7500まで下がりました。最近では数分間に1000ポイントも下がる事態も起き、後になってそれが人的ミスによるものだったことがわかりました。私は、年金に対する税金を支払ってでも、お金をベッドのマットレスの中にしまっておいたほうが安全な気がしています。マーケットは下がり、政府は年金収入への税金をつり上げています。

日本人もアメリカ人も、経済的に安定した将来だけを目指して必死に働く国民だと思います。アメリカでは、莫大な予算を消費する政府と政治家がいます。最近の選挙では、おろかな形で税金を無駄い遣し、何年も事務所に居座る現職の政治家に反発する動きが出てきています。

そのため、両党の政治家は現職から追いやられつつあり、国民の多くが任期に制限が設けられることを望んでいます。しかし、彼らの職に制限をつけるような法律は通らないでしょう。国を愛する国民なら、選挙の資金源となる特別な利益団体と無関係な候補者に投票するべきだと思います。

一生懸命働いただけの見返りがあり、政府が無駄遣いをやめ、そして(まるで明日という日が来ないかのように)新紙幣を次から次へと印刷することもしない、いつかそんな将来がやってくると信じたいものです。

過去数年間、ついここ数ヶ月間にも、私は天文業界におけるアフターサービスの悪さという不穏な傾向に関心を持っています。

あるカメラの場合、水分を取り除いて、乾燥剤を再乾燥させるまでに6週間かかりました。そのため、私のお客様には、CCDチップが不良で交換が必要になるかもしれないとずっと話し続けていました。個人的に技術者を知っていて、彼にカメラを見てもらった結果、とくに悪いところはないと言われました。しかし、それが誤診だったのです。それさえなければ、私の顧客がCCDチップの交換に払う額は3500ドルで済みました。

さらに、私が使用していたカメラの場合は、まず技術センターに電話して、シャッターの調子が良くないことを伝えたのがことの始まりでした。その後何年もこの件を引きずることになったのです。私は、カメラのどこがおかしいのか(技術センターへの電話も含め)全ての説明を書き込んで送りました。すると単純な修理作業なので、費用は100ドルと言われました・・・。

まず、UPSの航空便を使って、65ドルの保険もつけてカメラを送りました。カメラは予定通り先方に届き、約2週間がたちました。電話してみると、すぐに作業に取り掛かれると言われました。しかし、数日後にまた電話をしてみると、当初の該当箇所の修理は終わったものの、問題の根本的な原因はわからず、ただし、全て点検済みと言われたのです。

結局、この特急修理サービスに100ドル、送料に146ドル、日数的には配送にかかった4日間を含めて、修理には数週間かかりました。ほかにも、ドームのホイール交換に関する電話で、新しいドームを買うしかないと言われたこともありました。

天文ビジネスは、近年落ち込み傾向にあります、平均的なアマチュア天文家が新しい機材を購入できるような自由に使えるお金を持っていないからです。

お粗末なアフターサービスが新たな標準になってしまったのか、それとも弱い経済の兆しなのか疑問に思うところですが、わたしたちの政府がきちっと予算立てを行い、余計な出費を止めることをただただ望むばかりです。


※Ironwood Observatory(Ken Archer氏)による、リモート天文台の建設やそのほかのサービスに関する問い合わせは、「お問い合わせフォーム」から、(営業部宛まで)ご連絡ください。

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