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金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

科学の黒歴史

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科学の黒歴史
 

  • 茗荷さくら 著
  • 暗黒通信団
  • 21×14.8cm、31ページ
  • ISBN 978-4873101620
  • 価格 270円

本書で扱われる倫理的な基準は、明確に示された「はじめに」と「おわりに」をお読みいただきたい。ともかく、宇宙科学をはじめ、(原子(核)物理学を除く)あらゆる科学について、その功罪の功のみが持て囃されている。だが本書を読むと、本当はそうではなく、罪の部分も無視してはならないことがわかる。特に人間を含む動物(人体)実験など倫理にもとるものも多数あり、その最たるものが1942〜1945年のマンハッタン計画だった。その主役の一人だったオッペンハイマーが遺した2つの言葉「科学者は罪を知った」「大統領、私の手は血まみれです」を、評者は本書で知った。日本でも毒ガス製造の研究が行われていたし、VX、サリン、ナパーム弾等々、第一次・第二次世界大戦で暗躍した物質と科学者は枚挙に暇がないほどだ。V2ロケット、あるいは最初の大陸間弾道弾と言われる日本軍の風船爆弾もしかり。たった5〜7時間しか生きていられなかったらしいスプートニク2号に乗せられたライカ犬や、スタンフォード監獄実験なども生々しい。

本書評で取り上げさせていただいた主旨は、宇宙望遠鏡だ、AIだ、先進医療だといった最先端科学の功部分だけではなく、罪部分にも目を向けていただきたいからだ。評者は本当に勉強になりました。まさしく正しくおすすめしたい本である。

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