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金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

アストロラーベ 光り輝く中世科学の結実

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表紙
アストロラーベ 光り輝く中世科学の結実

  • セブ・フォーク 著、松浦俊輔 訳
  • 柏書房
  • 468ページ
  • 定価 3080円

2週に1回、あるカルチャーセンターでの講義に行く関係で寄らせてもらっている書店で、見つけた途端購入していたのが本書。評者は今から60年近く前に大学に入学したが、その時研究室で見たのがアストロラーベ(模型)と六分儀と八分儀(いずれも実物)だった。そのうち後者2種は実習でも使い、天体の高度と方位から緯度経度を実測したが、アストロラーベは「ふーん、こんなものなんだ」と感じた程度のものだった。それが近代科学の発祥に繋がるものだったなんて、思いも寄らなかった!

アストロラーベが発明されたのは前150年ごろだとか、紀元2世紀ごろの著名な天文学者プトレマイオスやヒッパルコス、はたまた8世紀のイスラム人ファザーリだろうとか、様々に言われている。いずれにしても、1380年代のイギリスの詩人チョーサー(最初の文人)は著書『アストロラーベ解説』で、社会的秩序のために自らの正しい位置を知ることが可能であることが道徳的に必要だと、アストロラーベを評価したという。評者は、それが後世、自然科学が世の中に必要なことになった最大の理由だと考えている。人類が自然の中でその立ち位置(航海だけでなく)や存在意義を知る上で、天文学が必要になった最大の理由であるとも言えるのだ。読者の皆さん、アストロラーベを是非知ってください。

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