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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

NASA ―宇宙開発の60年

  • 佐藤靖 著
  • 中央公論新社 刊
  • 17 x 11cm、282ページ
  • 2014年6月
  • ISBN 978-4121022714

筆者は五島プラネタリウムで毎回「昔の今日こんなことがありました」といった話を枕に解説を開始した。例えば8月15日の投影なら、紀元前1352年の今日、エジプト・ナイル川付近で皆既日食が起こり「ツタンカーメン王の日食」と呼ばれたとか、1983年(旧暦七夕)に、森本雅樹さんらがスタンフォード46mアンテナからアルタイルに向けてメッセージを送信した、1986年には米・レーガン大統領が、NASAの商業衛星打ち上げからの撤退を宣言した、といったことをお客様にお話したのである。おかげで歴史好きの解説員と言われたが、歴史学は好きでなく、皆さんが天文に関心を持っていただく切り口としただけだ。

その資料は現在も延々と貯まりつづけ、今回再び大量に増加した。つまり本書末6ページにわたるNASA関連年表。若い人でも拡大鏡が必要な程の小文字だが、詳細で貴重なもの。読者の皆さんもぜひ資料にすると良いですよ。

著者は航空宇宙工学を勉強し、科学技術史とその政策を専門とされる学者で、したがっておそらく日本ではもっともNASAに詳しい方である。だから、NASAのこれまでとこれからについてが、実によくわかる。筆者が毎度お世話になっている「ハッブル・ヘリテージ」は全く人類の貴重な遺産で、それをくれたハッブル望遠鏡は、もし機械でなかったらノーベル賞授与もの。それらを詳細に語る第5章「無人探査と宇宙科学−人類の知識領域の拡大−」が特に重要だと筆者は評価している。書庫を飾る本として絶対おすすめである。