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金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

はやぶさ2の真実
どうなる日本の宇宙探査

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はやぶさ2の真実 どうなる日本の宇宙探査
 

  • 松浦晋也 著
  • 講談社現代新書 刊
  • 10.7×17.3cm、297ページ
  • 2014年11月
  • ISBN 978-4062882910

まるで降って沸いた総選挙。結果がどうなるか大変楽しみだが、原発、沖縄、復興と並んで日本の宇宙探査の今後は、相変わらず心配なままなのだろうか。

筆者は著者の前書「恐るべき旅路―火星探査機のぞみのたどった12年」 「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」 の2冊を読んで大いに勉強させてもらった。何をかといえば機械工学科・大学院メディア研究科を卒業されていわゆる科学ライターとして活躍なさる著者の科学・工学的メッセージはもちろん、政治的分析をこの2冊から学ばせてもらったのだ。

本書も、書き始めこそはやぶさとはやぶさ2の任務と技術力を語っているが、その最終第六章こそが本書の本命である。表紙の帯に、あのホリエモンさんの絶賛的呟き「…宇宙探査への国家的無策のために…」が全てを物語っている。宇宙開発委員会・政府および各種官公庁があやなしてきた日本の宇宙開発における各種失敗は新聞やテレビなどでほとんど報道されず、これまで判らずじまいだった。ましてやその裏側に、米国の日本に対する関税撤廃等の圧力があったことなど「???」続きなのだ。

歴史が単純明快科学的に動くなどというのは真っ赤な嘘。政治的な欲の突っ張り合いが宇宙探査にも起こっているのだ、ということをぜひ本書で読み取っていただきたい。そして、著者がおっしゃる理学的こだわりがなぜ日本の政治家に理解されなかったのか、ぜひとも考察いただきたい。