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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

Atlas of the Messier Objects Highlights of the Deep Sky

表紙写真

  • Ronald Stoyan, Stefan Binnewies, Susanne Freidrich, Klaus-peter Schroeder 著
  • Cambridge University Press
  • 31.2×26.2cm、370ページ
  • ISBN 978-0-521-89554-5
  • 価格 5,035円
  • ※洋書の価格は為替相場に応じて変動します。ご了承ください。

洋書店で本書と対面したとき、あいにくなことに持ち合わせが足らず、あえなく退散した。その数日後、銀行から軍資金をおろして十分な持ち合わせを用意し、購入を前提としてゆっくりと立ち読みしたところ、これは大いなる宝物だと思った。電車の中でさらに読み続け、ページを開くごとに「うほ、うほ」と奇妙な声を上げていた評者に、隣席の年配女性が変な顔を向けていた。

すばらしい! 本書はタイトルのとおり、メシエ天体を観測する人のための本。その内容は、メシエの人物史、ヘベリウス、フラムスチード、ハレー、ホイヘンスからハーシェル、ボーデ、ロス卿等23名の著名観測者のメシエ天体観測記録をはじめ、メシエ自身の全天体の記録、意外とも言えるメシエ天体の統計分析、星団の分光研究やハッブル分類の説明にメシエ・マラソンの方法まで、メシエ天体に関するありとあらゆる百科事典なのだ。あなたもきっとノドから手が出るでしょう。ただし、洋書店の書棚には(現在我が書斎コーナーに鎮座する)1冊しかなかった! 理由は不明。山積みされていても良いはずの本なのに…。

本書最大の特徴はもちろん、M1〜110までの紹介だが、これがまた、すばらしい。各天体別に数ページ、写真とともに歴史・天体物理・観測の記事があるが、評者がもっとも感心しているものは、各天体記事の冒頭に記された、観測難易度、最小口径(肉眼も含む)、距離、大きさ、明るさ、発見者名などの一覧表である。中でもとくに観測難易度の判定は4人の著者の合作だが、類書にない親切な記事。ドイツ人らしい几帳面さ・誠実さが読み取れる。

1=肉眼で容易に見ることができる。2=肉眼では難しい。3=8×30双眼鏡で容易に見える。4=10×50双眼鏡で容易に見える。5=10×50双眼鏡で見るのは困難。と具体的で実にわかりやすい。当然空の条件も加味されるべきだが、目安としてはOKでしょう? 最小口径の指示も、分類は肉眼・15mm・30mm・50mmだけ。本書を読めば(本書の意図ではたぶん無いが)誰もがメシエ・マラソンをやりたくなる!

どうです、あなたも、評者と共に宝物の所有者になりませんか?高価ですが…。

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