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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

Optics and Optical Instruments

表紙写真

  • B.K.Johnson著
  • Dover Publications
  • 19.5×13.5cm、224ページ(ペーパーバック)
  • ISBN 978-0-486-60642-2
  • 価格 1,306円
  • ※洋書の価格は為替相場に応じて変動します。ご了承ください。

歴史的名著の復刊書刊行で有名なニューヨークのDOVER社から復刻出版された、「光学」に関する書。原本は1947年にイギリスで出版され、DOVER版の初版出版は1960年。それが、現在でも新刊として今年(2008年夏)都内の有名洋書店の書棚に、なんと2冊も並んでいたのだ。これ、珍しいのです。

ところで、そもそも日本のアマチュア向け光学書と称するものに、評者は大きな不満がある。評者が見る限りでは、「工学書」といってよい光学書が、現在の日本には以前本コーナーでご紹介した「図解レンズがわかる本」以外、ほとんどないに等しいのだ。故に、あえて本洋書を推薦するのである。

本書の大きな特徴に、光学理論書に必要と言われる難しい数式が一つもないことがある。もちろんX/Y程度の式は本書中にも数カ所ある。ただ高等数学に類する式はほとんどない(後半のごく一部にΣが登場するだけ)。

すなわち本書の実体は、そのタイトルにある OPTICS(光学)より OPTICAL INSTRUMENTS(光学機器)に重点が置かれた工学書なのだ。たぶん1947年出版という年代がそうさせているのだろうと思うが、望遠鏡なり顕微鏡なりがこう作られるべきであるということを述べた技術書なのである。特にレンズの組み合わせ構造に非常に詳しい記述がある。ただ、時代が時代だけに、レーザーなど21世紀の最新光学技術は当然記載されていない。

英語の技術書共通の性格で、原文の英語はやさしく怖れるに足らない。図版や写真が豊富に挿入されており、その意味でも気軽に読める本である。たぶん本書がDOVER版に採用された理由は、その辺にもあったのではないかと思う。つくづく日本にもこの手の光学書があれば、レンズ製作や鏡研磨、そして望遠鏡自作を志す人々が多数誕生したであろうことに、評者は残念至極である。

イギリスとの文化の違い(とくに科学教育)に悩むのが評者の偽らざる気持ちであり、その意味で日本の高校までの理科教育で今ではほとんど扱われなくなった光学に、みなさんの関心がいくらか本書から向いてくだされば幸いに思う。

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