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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

Pluto Files The Rise And Fall Of America's Favorite Planet

表紙写真

  • Neil deGrasse Tyson 著
  • W. W. Norton & Co.
  • 20.3cm×14.5cm、224ページ
  • ISBN 978-0-393-06520-6
  • 価格 2,657円
  • ※洋書の価格は為替相場に応じて変動します。ご了承ください。

本書は、アメリカ人のプルートーに賭ける思い入れがつぶさに分かり、誠に面白い。その中心にあるのは、冥王星の発見とディズニーランドの人気キャラクターである。この話題自体、これまで我が国ではまったく語られることが無く、こんなこともあったの? えっ、そんなことも! というエピソードが満載なのだ。

だが、最高のハイライトは、アメリカ自然史博物館ローズ・ホールが2000年2月19日に新装開館されたときのことだ。そこには宇宙における様々なスケール・モデルが展示されているという(評者は見学したことがないので伝聞形式で申し訳ない)が、太陽をはじめ、水金地火木土天海が立派な模型になっているのにもかかわらず、彗星・小惑星・月より大きな7衛星、そして冥王星が展示されていなかったのだそうだ。太陽系ゾーンでカイパーベルト天体の一員として紹介されているという。

これが新聞・テレビなどで報道されると、口頭ではもちろん、投書・メール・電話などあらゆる手段で抗議が(責任者の自宅まで)殺到したという。あのひょうきんで決して悪役になれないキャラのプルートーに対するアメリカ人の人気が背景にあった。

著者はなんとその展示の責任者だったのだ。だから、本書が著述された。

要するに本書は2006年8月末に起きたあの世紀のドタバタ「冥王星降格事件」をはさみ、現在に至るまでの報告集で、投書などが(個人情報は抜いて)原文筆記体で紹介されているのである。

評者が本書を発見した場所がおそらく全てを物語るので、ここで紹介しておきたい。それは某有名書店の新刊洋書コーナーで、隣には選出されたばかりのオバマ大統領の紹介書が、ずらりと並んでいた。つまりは一般書コーナーであり、天文書や科学書からは遠く離れていたのである。アメリカ人とその文化に関心をお持ちの方にも、本書をぜひおすすめしたい。冥王星の運命に関心のある方は、占星術関係の方々も含めて、もちろんのことだ。

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