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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

THE DAY WE FOUND THE UNIVERSE

表紙写真

  • Marcia Bartusiak 著
  • Vintage 刊
  • 13.1 x 2cm、368ページ
  • 2010年3月
  • ISBN 978-0307276605
  • 価格 1,498円
  • ※洋書の価格は為替相場に応じて変動します。ご了承ください。

本書は、以前本書評でご紹介した歴史的天文論文集録「Archives of the Universe」の編著者バーツシャク女史の、英国王立天文官リース氏や米国立自然史博物館の天体物理学者タイソン氏ら著名人の推薦付最新書だ。内容を一言で申し上げれば、20世紀前半の近代天文学史である。

どちらかといえば、おじさん・おばさん向き。英語という粗めのザルはあるが、本書評を目にするほどの向学心溢れる若者なら問題ない。おじさん・おばさん向けと申し上げたのには訳がある。その人たちのおじいさん・おばあさん年代(外国人だが)の活躍が詳細に記述されているからだ。評者の場合は親父の年代のアインシュタインをはじめ、ヘールやハッブルなど、そんな年代の人々が現代宇宙観の基礎を作ったのだ。

なにしろそれは、掲載図版を眺めただけでも理解できますよ。リック天文台クロスリー望遠鏡の前で背筋を伸ばして振り向く背広姿のカーチスや、ハーバード天文台の有名な女性コンピューター達、分光儀を操作するヘール、陸上選手姿のハッブルなど極めて珍しい写真と、ローエルからスライファー宛の渦巻星雲分光写真撮影依頼状、リーヴィットによる距離測定に重要なケフェイド周期・光度関係グラフ、ファンマーネン研究の渦巻銀河M33の回転図、シャプレーの宇宙観を破壊するきっかけになったハッブルのM31内変光星の光度曲線、膨張宇宙論の基礎になるハッブルの有名な速度・距離グラフなど、知る人が見たら、ヨダレが垂れること間違いないものがナマで見られるのだ。複写だが省略も変形もない、著者のメモなどオマケ付の実物は、訴えるものが違いますよ。

また、1917年7月2日午前2時半過ぎ、ヘール、アダムズと共にウィルソン山100インチ・フッカー望遠鏡のファーストライトに立ち会い、木星やベガなどを観望した詩人ノイエスが謳ったWatchers of the Skyという詩は、ぜひみなさんの目でお読みいただきたい。詩心のない評者が、妙な訳をつけると張り倒されるので…。本文はもちろん、豊富な注釈も読み応えがありますよ。

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