巨大銀河の片隅に紫外線で輝くミニ銀河

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【2013年1月18日 NASA

2億光年かなたの巨大な銀河の腕の先に、紫外線でしか見えない小さな銀河の存在が明らかになった。1億3000万年前に起こった銀河同士の接近の名残とみられる。


NGC 6872とIC 4970

棒渦巻銀河NGC 6872とその周辺。左上の先に紫外線で見つかった矮小銀河がある。クリックで拡大(提供:NASA's Goddard Space Flight Center/ESO/JPL-Caltech/DSS)

画像は、南天のくじゃく座の方向約2億1200万光年かなたにある棒渦巻銀河NGC 6872だ。そのすぐ上には小型の銀河IC 4970も見える。

NASAの衛星「GALEX」による紫外線観測データから、NGC 6872の渦状腕の先端に、紫外線でしか見えない小さな銀河(左上の黄色枠)があることが初めてわかった。これを含めると、NGC 6872は端から端まで52万2000光年もの広がりを持つ巨大な渦巻銀河ということになる。これは天の川銀河の5倍以上という大きさだ。

発見された矮小銀河は、次々と生まれる恒星が輝く北東の部分にあり、銀河同士が重力的に干渉し合う天体系に見られる潮汐矮小銀河(tidal dwarf galaxy)と思われる。紫外線で見るとNGC 6872の他のどの部分よりも明るく、生まれて2億年にも満たない高温の幼い星が多く存在していることがうかがえる。

GALEXの他、地上の望遠鏡や天文衛星の観測データから渦状腕の恒星の年齢分布を調べると、先端ほど恒星が新しく生まれ、銀河の中心に近づくほど古い星が存在することがわかった。これはもう1つの渦状腕である南西部分でも同様だった。銀河同士が近づいたりぶつかったりすると銀河内の星形成が誘発されるが、このNGC 6872銀河も、IC 4970との作用によって腕の先端で星が活発に生まれるようになったものと思われる。

NGC 6872とIC 4970については、2007年に別の研究チームが1億3000万年前に最接近した様子をコンピュータシミュレーションで再現しているが、今回の観測成果はそのシミュレーションと一致した結果となった。

一方NGC 6872の中心には、2万6000光年にも及ぶ棒状構造がある。しばらく星形成が行われた形跡がなく、数十億年以上前に作られた構造のようだ。ここに存在するのは、銀河同士の接近以前の名残である古い恒星ばかりである。

「他の銀河と作用した銀河の構造や力学を調べることで、宇宙の歴史においてどのようなことが起こったのか、正しい理解へと近づいていくことができます。そこからさらに昔の、宇宙がまだ若かったころの銀河を探ることにもつながるんです」(研究チームのEli Dwekさん)。