復興と鎮魂の星、小惑星「東北」誕生

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2012年3月6日 アストロアーツ】

これまで多数の小惑星を発見し、探査機「はやぶさ」や「かぐや」の名を小惑星に命名したことでも知られるアマチュア天文家の佐藤直人さんが、自ら発見した小惑星に「Tohoku(東北)」と名付けた。この小惑星は今年3月11日に衝をむかえる。


小惑星「東北」

2月14日に仙台市天文台のひとみ望遠鏡で撮影された小惑星「東北」。クリックで拡大(撮影:小石川正弘さん)

小惑星「東北」の位置

2012年3月11日午後8時ごろの仙台の空と、小惑星「東北」の位置をステラナビゲータでシミュレーション。クリックで拡大

自身が発見した100以上もの天体の軌道を研究していた佐藤さんは、1997年に自身が発見した小惑星が、東日本大震災から1周年にあたる2012年3月11日にちょうど「衝」を迎えることに気づいた。衝というのは太陽、地球、そしてその天体が一直線上に並ぶ現象を指すが、同時にそれはその天体が一番地球に接近するころでもある。

この小惑星は1997年2月1日に佐藤さんが発見したもので、「1997 CJ5」という仮符号が付けられていた。佐藤さんはこの天体に東北の人々に対する復興への願いと犠牲者への祈りを表す「Tohoku」という名を付けようと考え、国際天文学連合(IAU)小惑星センターに命名を申請したところ、異例とも言えるわずか1ヶ月で認定された。国際的な正式名称は小惑星番号23649番、小惑星名Tohoku。直径およそ数kmほどの大きさと考えられている。

佐藤さんがこの天体の姿を東北地方にある天体望遠鏡でとらえたいと考えていたところ、仙台市天文台の小石川正弘さんが観測を引き受け、同天文台にある東北地区最大の1.3mひとみ望遠鏡で撮影を行った。写真を見ると、「東北」はわずかに横長の棒状に写っていて、太陽系内を移動している様子がわかる。

今年3月11日、東北の名を冠した天体はちょうど真夜中にしし座の方向で南中する。18等級の明るさで肉眼では見えないが、すぐ近くで明るく輝く火星が良い目印になるはずだ。