アルマのテラヘルツ波受信機開発グループが文部科学大臣表彰受賞

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【2011年5月27日 アルマ望遠鏡

南米チリに建設中の国際望遠鏡プロジェクト「アルマ」に搭載する受信機開発グループが、文部科学大臣表彰の科学技術賞研究部門を受賞した。世界最高レベルのテラヘルツ波受信機を実現した技術は、医学や化学など他分野への応用も期待される。


(国立天文台の観山台長と受賞者の鵜澤さん、藤井さんの画像)

5月16日に国立天文台の観山正見台長より表彰状と盾の授与が行われた。左から鵜澤さん、観山台長、藤井さん。クリックで拡大(提供:国立天文台)

ALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)望遠鏡計画は、チリ・アタカマ高原に設置した66台のアンテナを組み合わせて1つの超高性能な電波望遠鏡として運用するという国際プロジェクトで、2012年から本格的な観測が予定されている。

望遠鏡に搭載される10種類の受信機のうち、最も観測周波数が高い「バンド10受信機」の開発グループが、「平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)」 を受賞した。受賞者は鵜澤佳徳さん、藤井泰範さん(国立天文台先端技術センター)、王鎮さん(情報通信研究機構)の3人で、「窒化ニオブ系超伝導体によるテラヘルツ検出技術の先駆的研究」が評価されての受賞となった。

アルマ望遠鏡は、空から届くミリ波・サブミリ波(電波と赤外線の中間域の波長)を周波数ごとに10のバンド(周波数帯)に分け、それぞれ専用の受信機で受信する。このうち最も周波数が高いテラヘルツ領域をカバーするバンド10受信機の開発と製造を日本の国立天文台が担当しているが、その高周波数ゆえに、海外製作のものも含め従来の超伝導体では十分な性能を達成することができなかった。

そこで鵜澤さんをリーダーとするバンド10受信機開発チームは、情報通信研究機構(NICT)と協力して窒化ニオブ系超伝導材料を用いた超高感度ミキサーを開発、そのミキサーを用いた受信機は大幅に性能が向上し、アルマ望遠鏡に搭載するための厳しい条件をクリアした。

サブミリ波(テラヘルツ波)は医学や化学、生物学において新たな撮像手段として注目が集まっており、今回世界最高性能のテラヘルツ受信機の開発に成功したことにより、アルマ望遠鏡や天文学のみならず他分野への応用も期待される。

鵜澤さんのコメント:

「約20年前から続けてきた窒化ニオブ系超伝導ミキサーの研究が、電波天文学史上最大の国際プロジェクトである巨大電波望遠鏡アルマに応用され、さらに賞までいただけたなど、喜びでいっぱいです。これまでご支援をいただいてきた多くの方々に感謝を申し上げたいと思います。今後もアルマの完成を目指し、また新たな研究開発に挑戦することによって、微力ながら新しい天文学の発展に貢献してきたいと考えています。」

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