WISEが太陽系小天体サーベイを完了 冬眠へ

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【2011年2月7日 NASA

赤外線天文衛星「WISE」が、太陽系小天体サーベイミッション「NEOWISE」を完了した。全天サーベイミッションも昨年10月に終えており、冬眠モードにはいる。


(「NEOWISE」ミッションで発見された彗星の画像)

「NEOWISE」ミッションで発見された20個の彗星。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA)

NASAの広域赤外線探査衛星「WISE」は、太陽系小天体のサーベイ(注1)ミッション「NEOWISE」を完了した。このミッションでは、20個の彗星、火星〜木星間の小惑星帯にある3万3000個の小惑星と、134個の地球近傍天体(NEO)(注2)が発見された。以前は小惑星とされていたがこの観測により彗星と判明したものもある。

2009年12月に打ち上げられた「WISE」は、赤外線の全天サーベイ観測で遠方銀河から地球に接近する小天体まで270万枚もの天体画像を撮影した。「NEOWISE」はその拡大ミッションにあたる。

2010年10月、主要ミッションを終えたWISEは冷却剤が尽きたために4つの赤外線カメラのうち2つが使えなくなった(注3)。小惑星観測が可能な残りの2つを使ってNEOWISEミッションのみをもう4ヶ月行い、小惑星帯の全サーベイを完遂したのである。(注4

また、新発見のみならず、1年間のうちに観測した既知の天体は、小惑星帯の小惑星15万3000個、木星軌道上の小惑星2000個、NEO数百個、彗星100個にのぼる。

天体のサイズを伝えるこれらの赤外線データと、太陽光の反射量を伝える可視光データを組み合わせることで、岩石の硬度など天体の組成がわかるため、小惑星の統計的な調査研究に役立てられる。これらのデータは現在カタログ化・分析が進められており、研究成果の発表が待たれる。

また、「WISE」主要ミッションと「NEOWISE」ミッションの観測データを組み合わせることで、1番近い恒星「プロキシマケンタウリ」(4.2光年)よりも近くにある褐色矮星(注5)や、太陽系の果ての知られざる巨大ガス惑星の存在が見つかる可能性もある。

「NEOWISE」ミッションも終えた「WISE」は、今後冬眠モードに入り地球の極軌道(注6)を周りつづける。必要に応じてまた何かの観測を行うことがあるかも知れない。

注1:「サーベイ」 特定の天体を観測するのではなく、全天あるいは特定の領域内に存在する天体をひと通り調査する、いわば地図作りのような観測ミッション。

注2:「地球近傍天体」 地球の公転軌道から4,500km以内まで接近する軌道を持つ彗星や小惑星。

注3:「冷却剤」 赤外線観測では、観測機器自体の熱による赤外線放射を防ぐために機体の冷却が必要となる。

注4: 小惑星帯の観測 小惑星帯の天体は太陽の周りを地球と同方向に公転しているので、サーベイするためには1周回ってさらに追いつく必要があり、全天サーベイより時間がかかる。

注5:「褐色矮星」 質量が小さいため核融合反応を起こさない暗い星。

注6:「極軌道」 赤道上を周回する軌道を「横まわり」とすると、「縦まわり」の軌道。南北両極を通過する。