宇宙からX線と紫外線で見た、ルーリン彗星

【2009年2月24日 NASA

NASAのガンマ線バースト(GRB)観測衛星スウィフトが、地球に接近中のルーリン彗星をとらえた。X線と紫外線の両方の波長で彗星が同時に観測されるのは、初めてのことである。


(スウィフトがとらえたルーリン彗星の画像)

スウィフトがとらえたルーリン彗星。UVOT(擬似カラー:青と緑)と、X線望遠鏡(擬似カラー:赤)の観測データを重ね合わせたもの(画像右上方が移動方向、左下方が太陽の方向)。クリックで拡大(提供:NASA/Swift/Univ. of Leicester/Bodewits et al.)

1月28日、スウィフトに搭載されている、紫外線・可視光望遠鏡(UVOT)とX線望遠鏡がルーリン彗星に向けられた。ルーリン彗星は、この時地球から約1億6000万km、太陽から1億8500万kmの距離に位置していた。

NASAの博士研究員であるゴダード宇宙センターのDennis Bodewit氏は、「ルーリンの活動はひじょうに活発です。UVOTのデータは、毎秒約3000リットルの水が放出されていることを示しています」と話している。毎秒3000リットルとは、15分足らずでオリンピックの公式プールをいっぱいにしてしまう水量である。

スウィフトは、水を直接観測することはできない。水分子は、紫外線で水素原子と水酸基に分解するが、スウィフトのUVOTは、水酸基の方を検出する。

UVOTには、プリズムに似たグリズムと呼ばれる装置が組み込まれていて、光を波長ごとに分けることができる。このグリズムの観測領域には、水酸基がもっとも活発な波長域が含まれている。また、この波長域をカバーした観測を宇宙から行えるのは、現在スウィフトだけである。

また、Bodewit氏は「この装置を使うと、彗星がどんな種類のガスをどれくらい生成しているかを見ることができます。また、データから、彗星と太陽系の起源に迫るヒントが得られるでしょう」と話している。

ルーリン彗星の画像には、40万kmもの距離にかかる水酸基の雲がとらえられている。彗星から遠く離れると、水酸基も酸素原子と水素原子へと分解されるが、その原子の雲に太陽風が作用すると、X線で輝く。スウィフトのX線望遠鏡は、そのX線をとらえるのである。活発に活動するルーリン彗星は、原子の雲がとくに厚く、X線を放射する領域が太陽の方向に長く伸びている。

Carter氏は「今後の観測が楽しみです。より良いX線データが得られれば、ルーリン彗星の組成を明らかにするのに役立つでしょう。また、太陽系を巡るルーリン彗星の姿を3次元の立体像として描きだせるでしょう」と話している。