一風変わった銀河NGC 4921

【2009年2月12日 HubbleSite

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた渦巻銀河NGC 4921の画像が公開された。NGC 4921は星間物質が少ない銀河なので、はるか遠方の銀河が透けて見えている。


(HSTがとらえたNGC 4921の画像)

HSTがとらえたNGC 4921。クリックで拡大(提供:NASA, ESA and K. Cook (Lawrence Livermore National Laboratory, USA))

約3億2000万光年の距離に位置する「かみのけ座銀河団」は、銀河団の中でもわれわれに近いものの1つである。1000個以上の銀河がひしめいていて、銀河どうしの衝突や変形が頻繁に起きるため、渦巻銀河は少なく楕円銀河が多い。

NGC 4921は、かみのけ座銀河団の数少ない渦巻銀河だが、その中でもさらに珍しい特徴を持つ。一般に渦巻銀河の腕には星が次々と形成される領域があり、そうした領域のまわりにはちりが広がっているものだが、NGC 4921ではあまり星形成が活発でない。HSTがとらえた画像には若くて青い星がいくつか見られるが、その間を満たす物質は少ない。結果として、NGC 4921はまるでクラゲのように透きとおっている。

NGC 4921の向こう側には、はるか遠方、つまりはるか過去の銀河が見えている。楕円銀河と渦巻銀河に分類できる現在と違い、さまざまな形、大きさ、色の銀河が存在する。

この画像は、米・ローレンス・リバモア国立研究所のKem Cook氏が率いる研究チームがNGC 4921で変光星を探すために撮影した計80枚のデータから作成されたものである。あいにく、HSTの掃天観測用高性能カメラ(ACS)が2007年に故障したため同チームの研究は中断を余儀なくされてしまったが、今年5月に予定されているHST修復ミッションの後で観測を再開したいとのことだ。