巨大楕円銀河の起源か、100億光年かなたの年老いた銀河たち

【2008年4月22日 University of Nottingham

100億光年かなたに存在する数千個の銀河が観測された。これらの銀河は大質量のダークマターに取り囲まれていることが明らかとなった。このダークマターの発見は、われわれの近傍宇宙に存在する巨大楕円銀河の進化のなぞにせまる重要な成果となりそうだ。


(100億光年の距離にある銀河をとらえた画像)

100億光年の距離にある銀河(白い矢印)。クリックで拡大(提供:UKIDSS UDS Survey Team)

イギリスの赤外線望遠鏡 UKIRTが3年がかりで行った観測により、満月の大きさの4倍を超える領域に10万個以上の銀河がとらえられ、その地図が作成された。

10万個の銀河の中には、ビッグバンから約40億年後と考えられる宇宙に存在する銀河が数千個含まれており、英・ノッティンガム大学の研究チームがこれらの銀河について研究を行った。

初期宇宙の銀河など、遠方の天体が発した可視光は、宇宙膨張のために大きな赤方偏移を受け、より赤い波長の光となって観測される。そのため赤外線観測は、初期宇宙に起きた現象などをとらえるのに適している。

研究チームは、銀河には赤や黄色の星が数多く存在することから、銀河の年齢がすでに年老いていることを明らかにした。また、銀河が目に見えない巨大なダークマターに取り囲まれていることを明らかにした。

ダークマターの存在は、銀河を結びつけている重力の影響を調べることで、間接的に検出でき、またその質量を推測することもできる。同研究チームによる計算から、銀河を取り巻くダークマターは、最大で太陽の百兆倍ほどの質量をもつと考えられている。近傍宇宙では巨大楕円銀河が、同じような大質量のダークマターから成るハローをもつことが知られている。ハローとは、銀河の周りを球状に取り巻く構造のことである。

研究チームでは、大質量のダークマターこそ、100億光年かなたの宇宙と近傍宇宙とを直接的に結びつける証拠であるとして、UKIRTがとらえた年老いた銀河が、実は現在われわれの近傍宇宙に存在する巨大楕円銀河へと進化する前の姿であると発表した。

巨大な楕円銀河の形成過程は大きななぞで、今回の研究はそのなぞの解明にせまる重要な成果となりそうだ。研究チームは、さらに遠方にある銀河にせまるため、今後数年間観測を続ける予定だ。