132億光年かなたに成熟した星をもつ銀河を発見

【2007年7月26日 Caltech Media Relations

われわれから130億光年以上のかなたに6つの銀河が発見された。これらの銀河は、ビッグバンから5億年後の初期宇宙に存在していたと考えられている。銀河には成熟した星が発見されており、宇宙で最初に星が輝き始めたころに誕生した可能性が指摘されている。


重力レンズを利用した観測の概念図

重力レンズを利用した観測の概念図。クリックで拡大(提供:Caltech)

ビッグバンから30万年ころの宇宙では、大量の水素があったために星や銀河の光が届かなかったと考えられている。10億年ほど続いたこの期間は宇宙の「暗黒時代」と呼ばれている。やがて大量の星が誕生し紫外線が放射されるようになったことで、暗黒時代は終わりを告げたと考えられている。最初に星の光が輝き始めた瞬間、つまり「宇宙の夜明け」を観測することは、宇宙の進化を知る上で大きな課題となっているのだ。

カリフォルニア工科大学のRichard Ellis教授らのチームは、重力レンズ(解説参照)を利用した観測で銀河団の周辺を慎重に調べ、宇宙の年齢が現在の4パーセント以下(ビッグバンから約5億年)だったころの銀河6つを発見した。

Ellis教授は3年を要した今回の観測について「わたしたちが発見した星形成が進む6つの銀河の光は、20倍ほど増光していました。観測の対象となった宇宙の小さな領域には、多くの銀河が存在していることはわかっていましたが、実際の数は相当のものでした。銀河の識別には、暗黒時代が終わりを告げたころに、星が放っていたと思われる紫外線の強さを計算し、それを利用しました」と話している。

130億光年以上の遠方にあることを明確に証明することは、そう簡単なことではない。現在利用されている望遠鏡の中で、もっとも高性能なものを使ってもひじょうに難しい。そのためチームでは、銀河を最初に検出してから1年かけて、慎重に確認を行った。そして、銀河に成熟した星が存在することを明らかにした。星の成熟は、以前から星の形成が始まっていたことを示している。つまり、それらの星は、宇宙が夜明けをむかえたころに誕生した可能性があるのだ。

重力レンズ

強い重力場に生じる空間の歪みによって、通過する光が屈曲させられる現象。この重力による光の湾曲現象を、光学レンズの光路屈折になぞらえて重力レンズと呼ぶ。、銀河団の周りに巨大な円弧状のリング像の一部が発見されたり、四葉のように見えたりする例など、重力レンズ効果による特異な映像が多くとらえられている。像の歪みぐあいから、重力天体の質量や対象天体までの距離など、さまざまな情報を得ることができる。(最新デジタル宇宙大百科より)