火星探査機マーズ・エクスプレス、南極の極冠にも水の氷を確認、予想以上に大量の水が存在か

【2004年3月20日 ESA Mars Express

昨年12月25日に火星周回軌道に投入されたヨーロッパ宇宙機関(ESA)の火星探査機マーズ・エクスプレスの周回機は、火星上空から探査を続けているが、火星の南極の極冠付近に大きく広がる水の氷の存在を確認した。

(火星の南極の画像)

可視光赤外線鉱物分光器(OMEGA)による火星の南極。ピンク色で示されているのは、二酸化炭素の氷(ドライアイス)、緑や青色は、ドライアイスを含まない水の氷(提供:ESA-OMEGA)

近年まで専門家は、火星の北極に広がる極冠に水の氷が含まれることを示唆する化学的なデータを得ていた。一方、南極の極冠については、二酸化炭素の氷(ドライアイス)と水の氷が混じっていると考えられてきたが、水の氷が存在する直接的な観測結果は得られていなかった。そこで今回、マーズ・エクスプレスに搭載された可視光赤外線鉱物分光器(OMEGA)によって、太陽光線と火星の極から反射される熱が調べられた。そしてそのデータから、確かに水の氷が存在していることが示されたのである。

観測データによれば、南極の水の氷は数百平方キロメートルにもわたって広がっている、いわゆる永久凍土の状態であるとみられている。土が混ざっているために光が反射されず、他の探査機ではうまく捉えることができなったのだが、マーズ・エクスプレスの赤外線観測によって存在が明らかにされたというわけである。データからは、火星全体に予想以上に大量の水の氷が広がっている可能性も示している。

今回のデータをもとに考えると、南極の極冠は3つの部分に分けられるようだ。1つは、明るい極冠の部分で、85%の二酸化炭素の氷と15%の水の氷が混ざった状態で存在している。2つ目は「崖」と呼ばれる急な斜面で、ほとんどが水の氷でできていると考えられている。そして3つ目は永久凍土の領域で、2つ目の「崖」の部分から数十キロメートルにわたって広がっているものだ。

マーズ・エクスプレスの探査は今後も続けられる。特に、5月に開始される地下探査レーダ高度計(MARSIS)による観測では、水の氷の深さが調べられる予定だ。その結果からは極冠における水の氷の量が正確に計算され、火星の水の存在だけでなく、火星の進化そのものについても重要な情報がもたらされると期待されている。