系外惑星を取り巻く、惑星の公転と逆回転する巨大な環

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系外惑星「J1407b」の環が主星J1407の潮汐力によって破壊されないメカニズムがシミュレーションによって解明された。環の回転の向きが惑星の公転と反対であれば、すぐには壊れないようだ。

【2016年11月4日 理化学研究所

ケンタウルス座の方向約420光年の距離にある星1SWASP J1407(以下、J1407)は、太陽の90%の質量を持つ、年齢が約1,600万歳の若い恒星だ。このJ1407で2007年、非常に複雑で長時間の「食」(明るさの変化)が起こった。発見当初、食の正体は明らかではなく、巨大惑星の周りの環がJ1407の前を通ったか、または原始惑星系星雲を持つ恒星がJ1407の前を通ったという2つの可能性が考えられた。

その後、2015年にJ1407の食の時間変化が詳細に分析され、この食は巨大な環を持つ惑星J1407bに起因することが明らかになった。モデルでは、J1407bの質量は木星の40倍以下で、環の半径は約9000万kmと考えられている。この環は土星の約190倍に相当する非常に大きなものだ。

モデルではさらに、J1407bがつぶれた楕円軌道を公転していることが示唆され、J1407bは主星に3億kmまで近づくことがわかった。この近星点(惑星が主星に最も近づく点)では、環の外側部分が主星のロシュ限界の内側へ入ってしまうことになる。ロシュ限界とは、ある天体に近づける限界の距離のことで、その内側では近づいた物体が主星の潮汐力によって破壊されてしまう。つまり、モデルが正しければ環が破壊されてしまうことになる。

理化学研究所のSteven Riederさんとオランダ・ライデン天文台のMatthew Kenworthyさんの研究チームは、コンピュータシミュレーションによってJ1407bの環が破壊されるかを調べた。その結果、J1407bの環の回転が公転と逆向きだと、環が10万年以上にわたって存在できることを突き止めた。一方、土星の環と同じように公転と同じ向きの回転だと、たった数十年で環がかなり小さくなってしまうことがわかった。

コンピュータシミュレーションの動画。(左)J1407bの環の回転が公転と逆向きの場合、(右)公転と同じ向きの回転の場合(提供:Steven Rieder)

系外惑星の環には、私たちが想像もしていなかった“巨大かつ回転が公転と逆向き”というものがあることが明らかになった。今後、環を持った系外惑星が多く発見されていくことで、環の形成過程や系外惑星の形成過程との関係にも研究が進展すると期待される。

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