リュウグウ粒子からガス成分を検出

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小惑星リュウグウの粒子からヘリウムなどの貴ガスが見つかった。また、「はやぶさ2」カプセル内の空間からもリュウグウ物質に由来する気体が検出された。

【2022年10月25日 JAXA (1) / (2)

探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星リュウグウの試料を分析しているJAXA内の「初期分析チーム」のうち、九州大学の岡崎隆司さんを中心とする「揮発性成分分析チーム」の分析結果が新たに発表された。

リュウグウ粒子から貴ガスを検出

揮発性成分分析チームでは、リュウグウ粒子のうち直径1mm弱(0.3g以下)のものを24個使い、一粒ずつペレット状に固めて表面の観察や分光を行ってから、これらのペレットを真空中で段階的に加熱して、出てきたガスの種類や同位体組成の分析を行った。

リュウグウ試料
揮発性成分分析チームが分析した、リュウグウの試料(左:A室、右:C室の試料)。これらを一粒ずつ潰し、加熱して気体を抽出した(提供:JAXA)

その結果、第1回タッチダウンで採取された「A室試料」と、人工クレーターを生成した後の第2回タッチダウンで採取された「C室試料」の両方から、太陽系が誕生する前に存在していた星間物質(プレソーラー粒子)に由来すると考えられるアルゴン・クリプトン・キセノンの同位体が検出された。これらの同位体の組成は、最も始原的な炭素質隕石とされる「CIコンドライト」という隕石に似ているが、検出されたこれらの貴ガスの濃度は、過去に見つかっているどの隕石よりも高かった。

このことから、リュウグウの母天体を形づくった物質は、CIコンドライトと似ているが、それよりさらに始原的な物質だったと考えられるという。

始原的な貴ガスの量
リュウグウ試料から検出された、太陽系誕生前の星間物質に由来する始原的な貴ガス(キセノン132、アルゴン36、クリプトン84)の量。右上にいくほど量が多い。リュウグウのA室試料(オレンジ色の円)とC室試料(緑色の三角)はいずれも、これまでの隕石(その他のマーク)よりも始原的な貴ガスを多く含んでいる(提供:Okazaki et al., 2022a)

また、太陽から太陽風として飛来するヘリウム・ネオンや、太陽系の外から降りそそぐ「銀河宇宙線」に特有のネオンの同位体も検出された。ただし、太陽風由来の貴ガスが多く検出されたのはA室の粒子の10個中2個だけで、C室の粒子からは検出されなかった。検出された貴ガスの量を元に、A室の粒子が太陽風にさらされていた年数を見積もったところ、およそ数十年以下という結果になった。

一般に、太陽風の粒子は天体に衝突しても0.1μmほどの深さまでしか入り込めないので、太陽風由来の貴ガスが検出されたリュウグウ粒子は、リュウグウのまさに表面にあった物質だと考えられる。これら表層の物質は、リュウグウ表面にあった期間がかなり短いようだ。

一方、銀河宇宙線に由来するネオンの量から、試料が銀河宇宙線にさらされていた年数を見積もったところ、こちらは約500万年という結果になった。銀河宇宙線は天体の表面から1-2mまで入り込むため、この結果は、リュウグウの深さ1-2mまでの物質は約500万年にわたってあまり大きく混ざるような変化を経験していないことを示唆するものだ。研究チームでは、もしリュウグウが現在よりも外側の小惑星帯などで誕生したのだとすれば、そこから現在の軌道まで移動したのは約500万年前だったのではないか、と考えている。

サンプルコンテナ内の空間からも貴ガスを検出

揮発性成分分析チームでは、2020年12月6日に「はやぶさ2」のカプセルがオーストラリアで回収されてから約30時間後に、サンプルコンテナの内部にあったガス成分を現地で採取している。今回、このガスについても詳しい分析が行われた。

本来、サンプルコンテナの内部は真空のはずだが、採取されたガスは圧力にして約68Pa(約1500分の1気圧)に相当する量があった。このガスの成分を調べたところ、地球の大気成分に加えて、太陽風に由来するヘリウムとネオンの同位体が含まれていることがわかった。これによって、このガスは確かにリュウグウの物質に含まれていた気体であることが証明された。小惑星からガス成分を気体の状態のまま地球に持ち帰ったのは、「はやぶさ2」が世界初となる。

コンテナ内のガス
「はやぶさ2」カプセルのサンプルコンテナ内部から検出された元素の存在度。アルゴン36に対する比率を、地球大気でのアルゴン36に対する比率で割った割合で示していて、縦軸が1(赤い破線)なら地球大気と同じ存在度であることを表す。ヘリウム4の存在度が地球大気より数十倍多いことがわかる(提供:Okazaki et al., 2022b)

太陽風由来の貴ガスがサンプルコンテナ内にあった理由として、研究チームでは、コンテナに格納されたリュウグウ試料の粒子同士がこすれあうことで、粒子のごく浅い表面に捕らえられていた太陽風の原子核が放出されたものではないかと推定している。

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