リュウグウに彗星の塵が衝突した痕跡を発見

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小惑星リュウグウの試料から、彗星の塵との衝突でできた溶融物が見つかった。衝突した塵には生命の材料物質となる有機物が含まれていたこともわかった。

【2024年1月29日 東北大学大学院理学系研究科・理学部

小惑星の表面は大気に覆われていないため、太陽風や宇宙の塵が高速で降り注ぐことにより表面の化学組成などが変わっていく。この現象は「宇宙風化」と呼ばれ、「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星リュウグウの試料も宇宙風化を受けている。リュウグウは地球に近い軌道を公転する「地球接近小惑星」であり、その試料の風化を調べると、地球の近くに存在する塵の性質を知る手がかりになる。

東北大学の松本恵さんたちの研究チームは、リュウグウの岩石試料を走査型電子顕微鏡で観察し、リュウグウの表面に小さな塵が衝突してできた、直径5~20μmの溶融物(いったん融けて再び固まった物質)を複数発見した。この溶融物の内部を3次元CTで観察し、成分の化学分析を行ったところ、溶融物が主にケイ酸塩のガラス質であること、ガラスの中に小さな球状の硫化鉄の粒子や気泡が含まれていることがわかった。

リュウグウ粒子の溶融物
(左)リュウグウ粒子の電子顕微鏡画像。丸みを帯びていて水滴のような見かけの溶融物が見られる。(右)溶融物断面のCT像。多くの気泡を含んでいることがわかる(提供:東北大学リリース、以下同)

また、この溶融物の組成が、リュウグウの主成分である含水ケイ酸塩鉱物と彗星の塵が混ざったものであることもわかった。彗星の塵がリュウグウに衝突したことで、リュウグウの表面物質と塵が高温になって融け、混ざりあったとみられる。

今回見つかった融解物は次のような過程でできたと考えられる。まず、リュウグウの含水ケイ酸塩鉱物が衝撃による高温で加熱されると、中に含まれる水が蒸発して水蒸気となる。融けたリュウグウの物質と彗星塵は混ざりあい、急激に冷やされてガラスとなって固まる。ガラスの中には水蒸気の気泡が閉じ込められる。

さらに、溶融物の中には炭素質の物質も含まれていた。「オールトの雲」のような低温の場所で生まれた彗星に多く含まれている有機物が融け残ったものだと考えられる。この炭素質物質は小さな穴がたくさん開いたスポンジ状で、彗星の塵に含まれる有機物と見た目はよく似ているが、窒素や酸素をほとんど含んでいない点で化学的には彗星塵の有機物と違いがある。リュウグウに彗星の塵が衝突したとき、塵の中の有機物も高温に加熱されるために窒素や酸素が揮発して、炭素質物質から失われたのではないかと考えられる。

溶融物中の炭素質物質
溶融物に含まれている炭素質物質を拡大した像。スポンジのように小さな穴が開いており、小さな硫化鉄の粒子を含んでいる。こうした特徴は、彗星の塵に含まれる太陽系の始原的な有機物によく似ている

これまでのリュウグウ試料の分析結果も踏まえると、今回明らかになったリュウグウ表面への彗星塵の衝突は、約500万年前から現在までの時代に、リュウグウが地球に近い現在の軌道付近にいるときに起こったと推測される。

太陽系の遠方から地球近くに飛来する彗星の塵は、小惑星に衝突して表面の特徴を変化させるだけではなく、地球にも生命の材料となる有機物をもたらした可能性がある。今回の研究で、地球の近傍に飛来する塵が小惑星表面に衝突して具体的にどんな変化が生じるかが明らかになった。今後、さらに多くの溶融物の分析が進めば、宇宙から地球の近傍領域に、どのような物質がどれくらいの量もたらされたのかが明らかになると期待される。

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