(午後)6時を示す時計の針

18時:準備

メシエマラソンの条件と
スタート前のチェック

マラソンに適した時期は意外と短い

さて、メシエマラソンを実行するためには、それなりの計画と準備が必要です。まず決めなくてはいけないことは、いつ実行するかということでしょう。一晩で107個すべてのメシエ天体を見ようというのですから、いつでもいいというわけではありません。

単純に考えれば、夜の長い冬ならばそれだけ多くのメシエ天体を見られるのではないか、と思いがちですが、そうは問屋が卸してくれません。なぜなら、冬の間は太陽がさそり座からいて座を通過するため、メシエ天体の密集する地域を見ることができないのです。

もちろん夏場は夜が短くマラソンには適していません。

こう考えていくと、メシエマラソンの実行に適した時期は、夜の時間がほどほど長く、太陽がメシエ天体の過疎地に入る時期ということになります。その時期とは、ズバリ3月下旬です。

春の太陽周辺春分(3月21日ごろ)

夏の太陽周辺夏至(6月21日ごろ)

秋の太陽周辺秋分(9月23日ごろ)

冬の太陽周辺冬至(12月22日ごろ)

太陽周辺のメシエ天体を、四季で比較(画像クリックで全天図を表示)。春分のころだけ、太陽周辺にメシエ天体が存在しないのが一目瞭然。下の図のように、確かにすべてのメシエ天体が夜間に出現する(画像はすべてステラナビゲータで作成)

春分前後の全天図

実際のマラソンを行うためには、月明りの影響のないことや、日常生活に影響を与えないことなどの要因を加味して、3月中旬から4月上旬の新月に近い週末が最適ということになります。

メシエマラソンの出走準備

メシエマラソンは、たった一晩でメシエ天体すべてを見てしまおうという競技ですから、本物のマラソン競技と同様にスピード、体力、気力との戦いとなります。中途半端な心構えや装備では完走は望めません。それなりの準備をして競技に望むようにしましょう。以下に、メシエマラソン完走のためのポイントを掲げます。

(1)場所の選択が重要

メシエマラソンを行うには、いうまでもなく空が暗い観測場所が必須です。肉眼で最低でも5等星までは確実に見える空でなくては完走は難しいでしょう。またどんなに暗い空の下でも周囲が開けてなくては、絶対に完走はできません。特に東側と西側については地平線近くまで見通せることが第一条件となります。

(2)使用する光学系

マラソンに参加するための光学系は、双眼鏡でも、望遠鏡でも構いませんが、比較的明るいものの多いメシエ天体とはいえ、中には小さく暗いものもあるので、双眼鏡なら16×70(口径7cm、倍率16倍)クラス以上でないと苦しいでしょう。望遠鏡なら8cm屈折か、13cm反射以上の口径が欲しいところです。20cmシュミット・カセグレンならメシエ天体を充分に楽しむことができます。さて、望遠鏡の倍率は30〜60倍、視野が広い広角タイプアイピースがあれば申し分ありません。

(3)架台はできれば赤道儀

架台は、経緯台・赤道儀どちらでもかまいませんが、赤経・赤緯値で導入できる赤道儀の方が、効率がいいのでおすすめです。もちろん、極軸を正確に合わせておくことが必要です。

(4)その他の注意

マラソンは孤独との戦いです。これはメシエマラソンとて同じこと、一緒に挑戦する仲間がいれば気も紛れるし楽しいでしょう。また、抜きつ抜かれつのデッドヒートを競い合うことで、成果も上がります。周りに仲間がいなければ、大会に参加してみるのも一つの手です。

さて、春3月とはいえ19時から朝の5時までの真夜中のマラソンは、寒さとの戦いでもあります。防寒着の着用はもちろんのこと、温かいスープやコーヒーそれにちょっとした夜食を用意しておくことも忘れないようにしましよう。

準備ができたらいよいよメシエマラソンのスタートです。それぞれの天体をどういう順番で回るかは各自の自由ですが、基本は西から東です。つまり、西の空に沈んでいく順番にルート選択をすればいいのです。「どんなルートで107個の天体を攻略するのか?」という戦略をたてることも、メシエマラソンの楽しみの一つであり、各自の裁量が問われるところでもあるのですが、ここでは、アストロアーツおすすめのマラソンルートを紹介しましょう。

19時:スタート

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