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金星を見よう

金星をさがそう

太陽と月、および人工衛星や流星などの突発的な現象を除けば、星のように輝く天体の中で一番明るいのが金星です。星座を形作る星々の中で一番明るい、おおいぬ座の「シリウス」と比べると、なんと最大で20倍もの明るさになります。

金星を見つけるには、時期さえ間違えなければ何の工夫もいりません。今年2010年の春から夏にかけては、日没30分後(午後7時ごろ)に西の空のやや低いところを眺めればすぐに見つかります。

2010年春〜夏 日没30分後の金星の位置(東京)

2010年春〜夏 日没30分後の金星の位置(東京)(ステラナビゲータで作成)

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ここが見どころ

8月8日の3惑星接近

8月8日午後7時半ごろのようす。火星、土星、金星が双眼鏡の視野に収まる。クリックすると7月25日から8月20日までの星の動きをアニメーションで表示(星図はステラナビゲータで作成)

1回見ただけでは飽きたりない、金星はそんな天体です。空の色は時間に応じて変化し、見る場所によって地上の風景もまったく異なるので、金星は観察するたびに別の表情を見せ、さらに共演者の存在がショーを盛り上げます。

夏休みに入り金星の高度は徐々に低くなりますが、他の惑星との接近が相次ぐので、日が暮れてから真っ先に探してみたくなる存在です。

7月下旬には金星の左上で土星と火星が接近しています。条件が良ければ右下の地平線付近に出ている水星とあわせて4つの惑星を同時に見られます。

8月8日には金星と土星がもっとも近づき、火星とともに双眼鏡の同じ視野で見られます。13日には金星の下を三日月が通り、20日には低空ながら金星と火星が最接近となります。

2010年5月〜8月、金星と他の天体との主な接近現象
日にち現象(クリックで星図を表示)
5月16日細い月と、数年に一度の大接近
6月15日5月よりは遠いが、三日月と並ぶ光景が印象的
6月20日かに座にある「プレセペ星団」と大接近。双眼鏡が必要だが美しい
7月10日しし座の1等星レグルスと大接近。明るさの違いに注目
7月31日金星の左上あたりで火星と土星が接近。この時期は毎日の変化を追ってみよう
8月8日金星と土星が最接近、近くには火星も
8月13日三日月との接近。火星・土星を合わせた4天体の接近ショー
8月20日金星と火星が最接近、近くには土星も

「星空ナビ」で2010年5月16日の天文現象を選んで再現

クリックすると月と金星の拡大図を表示

金星を見るときは、ニンテンドーDS用星座早見ソフト「星空ナビ」を使うと便利です。

探したい天体に「金星」を指定すれば、画面に矢印があらわれて金星の方向を示し、その方向にDS本体をかざすと実際の空に輝く金星を見つけることができ、金星のまわりに見える星の名前もすぐにわかります。

また、「星空ナビ」メニューの「天文現象一覧」から選ぶだけで、金星とほかの天体が接近するようすも再現できます(右図)。

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宵の明星、暁の明星

夕方の空で圧倒的な存在感を示す金星ですが、決して真夜中の空で見ることはできません。下の図でわかるように、金星が地球より内側を回っているからです。

金星が太陽の東側にある時は、夕方の西の空で見えます(宵の明星)。この時期の中でも、離角が最大になった状態を「東方最大離角」(下の図中【1】)と呼び、金星がもっとも見やすい時期の目安となります。地球から見た金星と太陽の角度(離角)は最大でも約47度なので、日没直後の金星の高さは47度が限界です。次回の東方最大離角は8月20日です。

地球・金星・太陽の相対的な位置の変化を、北側から見た図

地球・金星・太陽の相対的な位置の変化を、北側から見た図

ただし、太陽と金星を結ぶラインが地平線に対して垂直ではないため、金星の高度はいっそう下がることになります。この傾き具合は季節によって異なり、東方最大離角の8月末ごろは傾きが大きい(垂直から大きく横倒しになっている)ので、日没後の金星の高度は8月よりも5月から6月ごろの方が高くなります。ちなみに金星が一番明るくなるのは東方最大離角の少しあと、9月の半ばです。

ところで、金星は10月28日に地球を追い抜いて(内合…上の図中【2】)、太陽の西に移るので、明け方の東の空で見えるようになります。これを暁(あかつき)の明星、または明けの明星と言います。宵の明星しか見たことがない方は、今度の冬は早起きに挑戦してみましょう。来年1月9日の「西方最大離角」(上の図中【3】)前後が一番見やすい時期です。

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金星へ旅立つ探査機「あかつき」

「暁の明星」が明け方の空で見えるころ、私たちは金星を「もっと間近で見る」機会が多くなりそうです。日本の探査機、その名も「あかつき」が5月21日に打ち上げられ、今年12月に金星に到着する予定だからです。

金星という天体は空の中ではこんなにも見つけやすいのに、本当の姿を知るのは困難です。望遠鏡では金星が月のように満ち欠けしているようすはわかっても、表面の模様は一切見えません。19世紀までは、想像力たくましく「金星には木が生い茂っている」と考える天文学者もいたほどです。

20世紀後半に探査機が金星に送り込まれて初めて、金星が厚い雲につつまれていて、表面は450℃で90気圧という過酷な環境であることがわかりました。

金星探査機ベネラの画像

旧ソ連の探査機「ベネーラ13号」は金星に着陸し、短時間ながら高温高圧に耐えて表面のようすを地球へ届けた(提供:NASA/NSSDC)

「あかつき」プロジェクトでは、目に見える光だけではなく赤外線や紫外線などで金星を観測し、地表から大気の動きにいたるまでの幅広いデータが得られると期待されています。日本にとって初の(地球以外の)惑星探査成功を目指すプロジェクトとして、社会的にも注目を集めることでしょう。

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