2010年5月

今月のさんぽ先金星

冷房も、暖房も、ほとんど使うことのないこの季節。外へ出てみれば草木が風に吹かれてゆれ動き、なまあたたかい風が心地よく、あぁいつまでも春が続けばいいな、なんて思ったり。空に目を向けてみれば、夕方には金星、夜になると春の星座に火星や土星も加わって、ぱっと見にぎやかな星空です。さらに鹿児島県の種子島からは、日本の探査機「あかつき」が金星に向けて打ち上げられました。今年の春はいつもより、星に近づけそうな春ですよ。

一番星、それが金星

夕方、太陽が沈んでいったほう、つまり西の空を見渡すと、空のちょっと低めのところに、ひときわ明るい星の輝きに気づきます。じっと見つめて飛行機のように移動していなければ、それがたしかに金星である、と自信をもって言えるようになるはず。

金星の特徴は、なんといってもその「明るさ」です。夕方に見える明るい星、すなわち「宵の明星」としても知られています。これから数か月もの間、日が暮れて最初に見えてくる一番星が、金星です。

金星が見える夕景

とうちゃーん、ビカビカの星が出てるよ、見て見て!

おう、金星か。きれいだなあ。そういえば「あかつき」の打ち上げ、テレビで見たか?

見た見た。打ち上げってカッコイイ。人間乗れる? ぼくも金星に行けるかなあ?

なにを言っているんだ、だいじな息子をあんなところにやれるか!

???

金星を知ることは地球を知ることにつながる

金星は、地球よりもちょっとだけ太陽に近いところをめぐるおとなりの惑星です。そこはどんな世界でしょうか。黄金の世界? 美しい場所? 想像をめぐらせるのは楽しいものです。地球とだいたい同じ大きさで、固い地面があって、大気もある。そういう意味では地球とそっくり似たものどうし。双子の惑星とも言われます。

でもじつは、そこは地獄のようなところ。金星の大気はとても濃く、おもな成分はCO2(二酸化炭素)です。地球温暖化、ではなく金星温暖化が進んでしまい、地表付近は460℃という灼熱地獄。生物どころか機械にだって過酷な環境で、かつて金星に着陸したロシアの探査機も、あまりの高温により2時間しかもちませんでした。雲には硫酸が含まれています。生物は住めそうにありません。

地球にはみられない謎めいた風も吹いています。金星はゆっくりと自転しているのに、それをとりまく大気は高速で回っていて、ものすごい風が吹いているのです。スーパーローテーションと呼ばれるこの大気運動は、地球の常識では考えられません。また、金星にはその昔、海があったという説もありますが、まだよくわかっていません。

金星は地球と双子の惑星なのに、なぜこれほど違ってしまったのでしょうか? まだまだわからないことだらけです。おとなりの惑星のことを調べて、過去の出来事をひもとくことができれば、地球のこと、自然環境のことも、もっとよくわかってくるはずです。「あかつき」は金星をまわる気象衛星となって、地球と双子の兄弟の姿を見つめます。

金星

金星の天気予報は簡単、すべて「くもり」です。雲は光をよく反射するため金星はとても明るく輝いて見えます。金星の代表的なこの画像は30年以上前、1979年にNASAの探査機がとらえたものです。金星気象衛星となる「あかつき」からは、どんな雲の画像が送られてくるのでしょうか。
画像 © NASA

星空ナビで金星を見てみよう

実際の空で金星をさがす

[星をさがそう]メニューで「金星」を選ぶ [星をさがそう]メニューで「金星」を選び、金星がいまどこにあるかを調べてみよう。(下画面)

矢印が金星の方向を示す 「星空ナビ」に内蔵されている方位センサーで、画面の矢印が実際に金星がある方向を教えてくれる。(上画面)

矢印にしたがって動かすと、その先に金星がある DSをかざして見ながら矢印の方向に向くと、金星が見つかる。曇りの日や地平線の下にある時でも、方向を知ることはできる。

宵の明星と沈んだばかりの太陽 地球の内側を回る金星は、地球から見て常に太陽に近い位置に見える。宵の明星のすぐ下には、地平線に隠れたばかりの太陽がある。(上画面)

一日ごとの金星の動きを見る

[星座早見]メニュー 金星の見え方は日々変わっていく。[星座早見]メニューで金星を選んで上画面に表示し、下画面で日付を進めてその動きをみてみよう。(上下画面)

金星の動き 恒星など他の天体との位置関係が変わっていくのがわかる。金星の画面上の位置を固定して動かすこともできる。(上下画面)

星空ナビで金星がらみの現象をチェック

[天文現象]メニュー [天文現象]メニューで金星に関係する天文現象をチェックしよう。(下画面)
※リストに表示されるのは2012年までの天文現象です。

金星に関する天文現象 月やほかの惑星と接近する日は必見だ。ボタンで画面をズームイン/アウトしながら、夜空のようすをイメージしよう。(上画面)