銀河の歴史を物語る、銀河周囲に空いた3組の巨大な空洞

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銀河中心の超大質量ブラックホールが5000万年にわたって起こしてきた爆発的な噴出によって周囲の高温ガスに3組の巨大な空洞が作られた様子を、X線天文衛星「チャンドラ」が明らかにした。

【2015年6月11日 チャンドラ

おとめ座の方向1億500万光年の距離に位置する銀河群をX線天文衛星「チャンドラ」が観測し、銀河群に属する銀河NGC 5813の中心に存在する超大質量ブラックホールが起こしてきた爆発的噴出の歴史が明らかにされた。

銀河中心のブラックホールのすぐ近くからは強力な高速の双極ジェットが噴出しており、この双極ジェットの衝撃波によって銀河内に広がる数百万度もの高温ガスが外に押し出され、ガスに空洞のペアが作られる。最新のチャンドラによる観測で、この銀河に3組目となる空洞のペアが見つかった。つまり、これまでに3回ブラックホールから爆発的な噴出が起こったことになる。

NGC 5813を取り巻くガスに空いた空洞
NGC 5813。X線(紫)と可視光線観測のデータを合成。黄色の矢印の部分が、銀河を取り巻くガスに空いた空洞(提供:X線:NASA/CXC/SAO/S.Randall et al.、可視光線:SDSS)

さらに詳しく調べると、ブラックホールに最も近く一番新しい1組の空洞を作るのに必要な総エネルギー量は、古い2組の空洞を作ったエネルギーよりも小さいことがわかった。しかし3組のエネルギー生成率はほぼ同じで、最も内側の空洞を作ったブラックホールからの噴出はまだ続いていることを表している。

また、空洞の端(衝撃波面)が少しぼやけているのは、高温ガスの乱流によるものと考えられている。この仮定に基づくとガスのランダムな運動速度は時速約25万8000kmになり、理論モデルの予測や他の銀河群、銀河団に存在する高温ガスのX線観測に基づいた計算と一致した。

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