ロゼッタ、彗星のコマで起こる分子分解プロセスを解明
探査機「ロゼッタ」によるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の探査から、彗星表面から噴き出す水分子と二酸化炭素分子の急速な分解を引き起こしているのは、これまで考えられてきた「太陽光」ではなく「電子」であることがわかった。
探査機「ロゼッタ」は、昨年8月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着して以来、彗星を周回しながら複数の搭載機器でデータを集めている。搭載機器の一つである分光器「Alice」を使って彗星の大気の化学的組成を遠紫外線で調べた結果、彗星のコマに存在する水と二酸化炭素の大半は、彗星表面からの噴出に由来するものであることが示された。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。2014年11月20日に31kmの距離から撮影(提供:ESA/Rosetta/NAVCAM)
研究では太陽によって温められ彗星表面から噴出する水と二酸化炭素ガスの性質にスポットを当て、彗星核近くの水分子が分解してできた水素原子と酸素原子、および二酸化炭素分子が分解してできた炭素原子からの放射に注目した。その結果、分子の分解プロセスが2段階であることが示された。
太陽からの紫外線が彗星のコマに存在する水分子に当たると、エネルギーの高い電子が放出されて水分子が電離する。放出された電子はコマに存在する別の水分子に当たり、分子は2個の水素原子と1個の酸素原子に分かれ、原子がエネルギーを得る。Aliceで検出したのは、この原子が放射した特徴的な紫外線だ。同様に、電子が衝突し分解された二酸化炭素分子からの炭素原子が放つ紫外線も観測された。
この結果は彗星のごく近くで探査を行って初めてわかったことだ。チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は今年8月の太陽最接近に向け、今後ますます活動が活発になっていく。その活動を間近でとらえ続けているロゼッタから届けられる、新たな知見が楽しみだ。