エンケラドスの地下海に熱水環境
地下に液体の海があるのでは、と注目されてきた土星の衛星エンケラドス。日独米の共同研究により、地球の生命を育んだのと似たような海底の熱水環境が現存しているらしいことが明らかになった。
【2015年3月12日 東京大学】
土星の衛星エンケラドスは直径500kmの氷天体で、表面のひび割れから間欠泉のように水が噴出するようす(プリューム)が探査機「カッシーニ」によって観測されている。30〜40kmの厚さの氷の下には海があり、生命を育める環境にあるのではと注目を集めてきた。
カッシーニがとらえた、エンケラドスのプリューム(提供:NASA/JPL)
カッシーニのデータを分析した米独の研究チームが、エンケラドスからナノメートルサイズのシリカ粒子が放出されていることをつきとめた。関根康人さん(東京大学)と渋谷岳造さん(海洋研究開発機構)の日本チームは、これをふまえてエンケラドス内部の環境を再現する熱水反応実験を行い、ナノシリカ粒子が生成されるためには、地下の海の底で天体の岩石コア(核)と海水が90℃を超える高温で反応しているはずであることを示した。地球の海底の熱水噴出孔に似た環境が広範囲に存在するとみられる。
海底の熱水噴出孔は、地球で生命が誕生した場所として有力な候補だ。今回の成果は、生命を育みうる環境が地球以外にも現在の太陽系に存在することを初めて実証した画期的な発見となる。
エンケラドスの内部構造。地下の海の水が氷の層を通過して表面に噴き出している(提供:NASA/JPL)
3月13日、明け方の空で月と土星が接近。クリックで解説ページへ(「ステラナビゲータ」でシミュレーション)
ステラナビゲータで土星の衛星や探査機「カッシーニ」を表示
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