赤外線背景放射の「ゆらぎ」が示す、大量の未知の星
観測ロケットに搭載されたカメラの赤外線画像から、宇宙背景放射に未知の「ゆらぎ」が見つかった。この模様はこれまでに見つかっている星や銀河などの放射だけでは説明がつかないもので、例えば他の銀河の周囲に大量に存在する暗い星など、未知の赤外線光源が大量に存在することを示している。
【2014年11月10日 JAXA宇宙科学研究所】
「宇宙背景放射」とは、既知の星や銀河などがない背景領域の明るさのことだ。近赤外線の波長域で見た背景放射には、私たちがいる太陽系や天の川銀河内外に由来する放射が含まれている。
JAXA宇宙科学研究所と東北大学などの国際研究グループでは、観測ロケットで大気圏外に打ち上げたカメラにより2つの波長(1.1μmと1.6μm)の赤外線観測を行う「CIBER実験」を2009年から行っている。今回、2010年と2012年の観測画像から宇宙赤外線背景放射に未知の「まだら模様」が見つかった。
宇宙赤外線背景放射「まだら模様」の空間パターン(提供:JAXA, Tohoku Univ., NASA JPL/Caltech)
大きなまだら模様は天の川銀河内の塵由来の放射分布、小さな模様は天の川銀河外に由来する放射分布として説明できるが、0.1度ほどの角度に現れる模様は、これまで知られている天体の影響では説明できない。赤外線天文衛星「あかり」や「スピッツァー」による観測もあわせて考慮したところ、この模様は質量の小さい古い星由来の場合と一致する。
このことから、天の川銀河以外の銀河を球殻状に取り囲む領域(ハロー)に普通の観測では見えない暗い星が大量に存在し、これが今回見つかった模様として観測されているという新たな仮説が提示された。この説が正しければ、比較的近い銀河のハロー内ですら未知の星々が大量にあるということになる。
CIBER実験では口径11cmの望遠鏡が使われているが、今後はその3倍の口径の望遠鏡でさらに高精度の観測を行う「CIBER-2実験」も計画されている。
小型望遠鏡を高度200〜330kmの大気圏外まで打ち上げ、約5分間の撮影の後パラシュート降下で回収する(提供:ISAS/JAXA Department of Infrared Astrophysics)