90億光年彼方のIa型超新星を明るく見せる重力レンズ銀河

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【2014年5月1日 カブリIPMU

90億光年彼方の超新星を「重力レンズ効果」で明るく見せている銀河が発見され、超新星の正体が証明された。


重力レンズのしくみ

重力レンズで超新星PS1-10afxが増光するしくみ。地球から見て超新星より手前にある大質量天体の重力がレンズのように光を集めることで本来より明るく見える。クリックで拡大(提供:Kavli IPMU。以下同)

手前の銀河の存在を示すスペクトル

超新星が現れた領域の分光観測結果。超新星の母銀河(赤)とレンズとなっている手前の銀河(青)のそれぞれから放射される酸素の輝線が見られる。クリックで拡大

90億光年彼方の超新星を本来より明るく見せていた「虫めがね」が発見された。

この超新星「PS1-10afx」は通常の30倍以上も明るいことから、当初は新種の超高輝度超新星とも思われた。だがロバート・クインビーさん(カブリ数物連携宇宙研究機構特任研究員)らの詳しい調査で、通常のIa超新星がより地球に近い天体の重力レンズ効果(画像1枚目)により明るく見えているものと発表されていた(参照:2013/04/24「世界初、Ia型超新星を30倍明るくする重力レンズ効果を測定」)。

これを証明するためには重力レンズ効果を生み出す手前の銀河を見つける必要があったが、超新星が出現した銀河(母銀河)と重なった位置にあり、従来のデータでは区別ができなかった。同研究チームは超新星がじゅうぶん暗くなった後の2013年9月に米ハワイのケックI望遠鏡を用いて新たに観測を行い、手前の銀河を分離して見つけ出すことに成功した(画像2枚目)。

PS1-10afxは重力レンズ効果を受けるIa型超新星の初めての観測例だが、そのレンズ源を発見できたことで結果が確実なものとなった。

明るさがほぼ一定とされるIa型超新星は、遠方宇宙の距離を知る「標準光源」としても利用される。今後同じように重力レンズ効果を受けたIa型超新星を多数観測することで、宇宙膨張の研究に大きな役割を果たすと期待される。