リニア彗星(C/2012 X1)がアウトバースト、8等級に

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【2013年10月21日 CBET 3675】

アイソン彗星(C/2012 S1)など接近中の彗星がそろい踏みの明け方の空に、またひとつ注目の彗星が登場した。14等の予報だったリニア彗星(C/2012 X1)がアウトバーストを起こし、8等級にまで大増光している。


アウトバーストしたリニア彗星(C/2012 X1)

アウトバーストしたリニア彗星(C/2012 X1)。10月20日4時45分撮影。画像クリックで投稿ギャラリーページへ(撮影:埼玉県上尾市にて、門田健一さん)

リニア彗星(C/2012 X1)の軌道

リニア彗星(C/2012 X1)の軌道。黄道面に対して傾きが大きい軌道に沿って、太陽系のはるか彼方から接近してきたのがわかる。クリックで拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

今後のリニア彗星(C/2012 X1)の動き

2013年10月から2014年4月まで、日の出1時間半前のリニア彗星(C/2012 X1)の位置。クリックで拡大

東京都の佐藤英貴さんが10月20日21時10分(日本時。以下同)、米国の口径51cmリモート望遠鏡を使って、明け方の低空に見えるリニア彗星(C/2012 X1)がアウトバースト(急激な大増光)を起こしているのを観測した。CCD全光度8.5等の円盤状の姿をしており、予報光度は14等級だったが約6等の急増光で小口径の天体望遠鏡でも観望できる明るさになった。

佐藤さんによると、2007年に大規模なバーストを起こし都会で肉眼でも見ることができたホームズ彗星(17P)によく似ているという。

埼玉県の門田健一さんが10月21日4時46分にこの彗星を8.2等で観測し、バーストが確認された(口径25cm望遠鏡によるCCD観測)。

「アウトバースト」は天体が爆発的に明るくなる現象全般を指すが、彗星の場合、太陽に接近して温度が高くなり、氷と塵でできた彗星の本体(核)が分裂するなどしてガスや塵が一気に放出されることで起こる。

アメリカの天体捜索プログラム「リニア(LINEAR)計画」で発見されたリニア彗星(C/2012 X1)は1000年以上の長い時間をかけて太陽の周囲を回り、軌道のもっとも外側では太陽〜海王星の10倍もの距離にまで遠ざかる。来年2月の太陽最接近を前に、現在木星軌道の内側にまでやってきている。

地上からは現在かみのけ座の方向にあって明け方の東の空で見えており、これから約半年以上は明け方の東から南の低空で地平線上に位置する。今後の変化にぜひ注目してみよう。

また、明け方の空にはリニア彗星のほか、アイソン彗星、エンケ彗星(2P)、ラブジョイ彗星(C/2013 R1)も見えている。いずれも明るさは8〜10等だ。今後しばらくは月明かりの影響があるが、4彗星の観察や撮影に挑戦してみよう。


ステラナビゲータでリニア彗星(C/2012 X1)の見え方をシミュレーション

リニア彗星(C/2012 X1)の位置を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して確認できます。ステラナビゲータを起動後、「ツール」メニューから「データ更新」を行ってください。なお、20日21時を境にして急増光するようすも再現できます(データは暫定のものです)。