金星探査機「あかつき」が「いて座」を撮像

【2010年10月26日 JAXA

「あかつき」が4つのカメラを動作させて撮影した「いて座」の画像が公開された。


((左)IR1による画像、(右)UV1による画像)

(左)IR1による画像、(右)UVIによる画像(◯が検出された星像)。クリックで拡大(提供:JAXA、以下同じ)

(いて座撮像時のイメージ図)

いて座撮像時のイメージ図(10月8日 あかつきは金星と地球のほぼ中間に位置。姿勢変更してカメラ搭載面をいて座方向に向け撮像。図中央下部の大きなボール状のものが太陽、「あかつきくん」マークの左右のパドル上が地球と金星)。クリックで拡大

10月8日に「あかつき」は、搭載されている4つのカメラ(中間赤外カメラ(LIR)、紫外イメージャ(UVI)、1μm(マイクロメートル)カメラ(IR1)、2μmカメラ(IR2))などが取り付けられている面を「いて座」方向に向けて動作させ画像を取得した。そして、動作させた4つのカメラのうち、1μmカメラ(IR1)と紫外イメージャ(UVI)とで撮像した画像中に星像が認められた。

「あかつき」のカメラはひじょうに明るい金星用に設計されているため、星像はかなり暗くなってしまうが、2〜4等星のいくつかを同定することができた。

画像に写っているのは「いて座」の一部だが、紫外線をとらえる紫外イメージャ(UVI)、赤外線をとらえる1μmカメラ(IR1)が写し出した「いて座」は人間の目とは見え方が異なっている。

人間の目で見ると、赤い星や青白い星など星によって少しずつ色が違う。これは星の表面温度を反映していて、温度が高い星は青く、低くなるに従って白→黄色→橙→赤と変化する。

「あかつき」のカメラは紫外線や赤外線という目に見えない光をとらえるが、温度の高い青い星は紫外線を多く発生し、比較的温度の低い赤い星は赤外線を多く発生している。そのため、紫外イメージャ(UVI)では青い星を、1μmカメラ(IR1)では赤い星を検出しやすくなる。実際に紫外イメージャ(UVI)、1μmカメラ(IR1)のそれぞれの画像を比べると、一方で検出されていない星が他方では検出されているなどカメラによる違いが現れている。

また、中間赤外カメラ(LIR)および2μmカメラ(IR2)に関しては、観測波長域や検出器温度状況から今回の撮像条件では星が検出されないことが事前に予測されていたが、それぞれに合った条件下で適正な画像が取得されており、現時点で健全な状態であることが確認されている。