球状星団の巨大ガス惑星は、ほぼすべて破壊された?

【2010年9月16日 NASA

最新のコンピュータ・シミュレーションによって、球状星団「きょしちょう座47」における恒星とそのまわりを回る巨大ガス惑星の進化が再現された。年齢110億歳と計算されている同星団では、巨大ガス惑星の96パーセント以上がすでに破壊されてしまった後のようだ。


(中心星によるホット・ジュピター破壊の初期段階の想像図)

中心星によるホット・ジュピター破壊の初期段階の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/GSFC/Frank Reddy)

トランジット法とは、地球から見て惑星が恒星の前を横切る際に恒星の光が暗くなることを利用して惑星を検出する方法だ。トランジット(通過)を観測することによって、惑星の質量や大きさなどの情報を得ることができる。しかし、トランジット法を利用した観測でこれまで、球状星団に惑星が発見されたことはない。

球状星団における惑星探しは、今から10年ほど前に始まった。南天にある球状星団「きょしちょう座47」のサーベイでは、3万4000個の恒星のまわりに少なくとも数十個の惑星が発見されると期待されていたにもかかわらず、見つかっていない。

NASAゴダード宇宙センターのDebes氏は「これまでに450個以上の系外惑星が見つかっていますが、そのほとんどが単独の恒星のまわりを回っているものです。球状星団は惑星にとって荒々しい場所でなのです。あまりに星の数が多すぎて、惑星の成長の材料がそれほど存在していないからです」と述べ、また「星の密度が高いということは、近くに存在する星の影響で、惑星がもともと生まれた場所から外へ放り出されてしまいかねません。さらに、これまでサーベイが行われた球状星団は、惑星の材料となる(水素やヘリウムなどよりも重い)重元素の量がかなり少ないこともわかっています」と話している。

Debes氏と同センターのBrian Jackson氏ら二人は、きょしちょう座47内に存在する巨大ガス惑星に潮汐力がかかるとどんなことが状況が引き起こされるのかに関するコンピュータ・シミュレーションを行った。それによると、星団の進化のかなり早い段階で、多くの高温のガス惑星「ホット・ジュピター」が中心星によって破壊されてしまうという結果が示されたのである。Debes氏とJackson氏のコンピュータ・モデルによると、星団が(約45億歳の太陽系に比べてはるかに若い)約10億歳の時点で、ホット・ジュピターの3分の1が破壊されると予測された。きょしちょう座47の現在の年齢は110億歳と計算されているため、ホット・ジュピターの96パーセント以上がすでに破壊されてしまっていることになるようだ。

Debes氏は「わたしたちのコンピュータ・モデルは、星団のサーベイで惑星が発見されなかった理由について“惑星を作る材料(重元素)が足りないことを考慮に入れる必要はない”ことを示してします。もちろん、惑星の数を減少させるこれ以外の影響もあるでしょう」と話している。

「ホット・ジュピター」は通常、太陽から水星までの3〜4分の1以下というひじょうに中心星に近い距離を回っている。そのような場合、惑星の引力が中心星に働いて、潮汐力によって恒星の一部が膨らむ。すると、少し遅れてできる惑星の膨らみが後ろから惑星を引っ張るような働きをし、惑星の公転が減速して中心星へと近づく。

潮汐力によってできる恒星の膨らみがさらに大きくなると、軌道上の惑星のエネルギーがさらに吸い取られる。やがて数十億年経つと、惑星は中心星に突っ込み、中心星によって引き裂かれてしまうのだ。

「最期の瞬間はドラマチックで、恒星による惑星大気の引き剥がしが起きます。最近も、ホット・ジュピターの1つであるWASP-12Bの研究で、惑星が中心星にひじょうに近いため破壊されつつあることが示されました」と例を挙げている(参照:ニュース「太陽のような星に破壊される惑星」)。

最後にDebes氏は「もしもわたしたちのコンピュータ・モデルが事実を示しているとすれば、星団における惑星探しは困難なものとなるかもしれません。大きな惑星がいなくなれば、あとはより小さく、より遠方の惑星を探すことになるわけですから、より長期間にわたってたくさんの恒星のまわりを探す必要が出てくるでしょう。しかも、かすかな惑星をじゅうぶんに検出できる感度をもった装置を使わなければなりません」と話している。

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