有人火星探査シミュレーションがスタート

【2009年4月7日 ESA Mars News

ロシア科学アカデミー生物医学問題研究所(IBMP)にある施設で、105日間にわたる有人火星探査のシミュレーションが開始された。


(シミュレーション施設に入る6名の参加者の画像)

105日間の初期シミュレーションのための施設に入る6名の参加者。クリックで拡大(提供:ESA)

(「Mars500」の施設の画像)

「Mars500」の施設。クリックで拡大(提供:ESA)

(シミュレーションで参加者に用意される寝室の画像)

シミュレーションで参加者に用意される寝室。クリックで拡大(提供:ESA)

ロシア科学アカデミー生物医学問題研究所(IBMP)とヨーロッパ宇宙機関(ESA)は、将来の有人火星探査に向けたシミュレーションプロジェクト「Mars500」を行っている。

「Mars500」は、火星・地球間の往復といった長い旅の間に、閉鎖空間で人間が受ける影響を調べることを主な目的としている。

まずプロジェクトでは、105日間の初期シミュレーションが実施され、その後520日間という長期の完全シミュレーションが実施される。

初期シミュレーションは、モスクワ時間の3月31日午後2時にIBMPにある施設で始まった。

シミュレーションには、ロシア側から2名の宇宙飛行士、医師、スポーツ生理学者の計4名、ヨーロッパ側からはESAの募集に応じて選抜されたドイツ軍のエンジニアとフランス空軍のパイロットが参加する。

今後施設の扉は105日間にわたってかたく閉じられたままとなり、参加者はその間、打ち上げから火星への着陸、地球への帰還にいたる火星探査のさまざまな段階を擬似体験する。管制官だけでなく、家族や友人との交信もすべて実際と同様、すなわち火星・地球間の通信で発生する20分間の遅れを再現して実施される。

その間、IBMPESAは、参加者が受けるストレスやホルモンの状態、免疫や睡眠の質、心理的状態や食事の効果に至るまでを調べる予定だ。。

ESAの有人宇宙飛行局で国際宇宙ステーション利用部門の責任者をつとめるMartin Zell氏は、「火星への旅では、限られた狭い空間の中で1年半もの間毎日同じ顔を見続けるという以外に、さまざまな問題が発生することでしょう。そのためにも重要なのは、長期にわたって閉鎖空間を体験した人間に現れる心理面、生理面への影響を知ることです。それがわかれば、最良の策を講じることができますし、また宇宙船の設計にも役立ちます」と話している。

なお、520日間の完全シミュレーションは、初期シミュレーションの終了後、別の参加者6名によって今年後半から開始される予定だ。