日本の小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワの撮影に成功

【2005年8月17日 宇宙航空研究開発機構 プレスリリース2005

日本の小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」が、探査のターゲットである小惑星イトカワ(糸川)の姿を捉えことに成功した。「はやぶさ」は、現在イトカワから約3万5000キロメートルの距離を飛行中で、イトカワ近傍に静止できるのは9月中旬の予定。静止後は、小惑星の観測を行い、その表面からサンプルを採取し地球に帰還、サンプルを入れたカプセルを回収することになっている。

(「はやぶさ」が捉えた小惑星イトカワの画像)

「はやぶさ」が捉えた小惑星イトカワの画像。クリックで拡大(提供:宇宙航空研究開発機構)

小惑星探査を目指す「はやぶさ」は、2003年5月に打ち上げられ、2004年5月の地球スウィングバイを経て、現在順調に飛行を続けている。8月12日には、小惑星イトカワから約3万5000キロメートルの距離に到達し、毎秒38メートルで接近している。今月下旬には、距離が3,500キロメートル、接近速度毎秒10メートルとなり、この時点までイオンエンジンを運転、9月中旬にはイトカワ近傍に静止する予定だ。

これに先立ち、7月29日から30日、今月8日から9日、および12日に、搭載された星姿勢計(スタートラッカ:注)によって小惑星イトカワを捉え、のべ24枚の撮影に成功した。また、これらの画像をもとに、地上からの電波による観測とを複合させて、精密な軌道決定が行われた。このような軌道決定は、世界的に初の試みといってよいだろう。

なお、宇宙航空研究開発機構では、同探査機が本年7月31日に、リアクションホイール(姿勢制御装置)3基のうち1基が故障したことに触れ、現在2基による姿勢維持機能に切り替えて飛行中であること、当初より2基の運用も想定されていたため、運用に支障はなく、小惑星近傍での一連の科学観測とサンプル採集は可能であると発表している。

「はやぶさ」によって撮影された写真は、JAXAメインサイト(http://www.jaxa.jp/)及び宇宙科学研究本部ウェブサイト(http://www.isas.jaxa.jp)で公開されている。「はやぶさ」搭載の狭視野光学航法カメラ(ONC-T)による撮影も、今月下旬にかけて計画されており、逐次上記ホームページで掲載される予定だ。

注:星姿勢計(星の画像を撮影し、衛星の姿勢を計算するための装置)


日本の小惑星探査機「はやぶさ」は、2003年5月9日に打ち上げられ、2005年の夏には小惑星イトカワに到達する。その後、およそ5ヶ月間ランデブーをして探査を行う。原始太陽系の姿がそのまま残っていると考えられている天体・小惑星のサンプルが回収できれば、もちろん世界初の快挙となり、惑星科学における大きな進歩が期待できる大注目の探査機だ。(「スペースガイド 宇宙年鑑2005」より一部抜粋)