110億光年かなたの爆発的な星形成

【2003年12月17日 NRAO Press Releases

NSF(国立科学財団)の電波望遠鏡VLAが、我々から110億光年離れた銀河で起こっている爆発的な星形成の証拠を見つけた。激しい星形成活動を示すスターバースト銀河の中でも、110億光年という距離はこれまでの最遠のものである。

(VLAによる、クローバーリーフのイメージ画像)

VLAによって捉えられたクローバーリーフの画像。シアン化水素が発する電波で観測し、ハッブル宇宙望遠鏡の画像と合成している(4つ見えるのは、重力レンズ効果によるもの)(提供:NRAO/AUI/NSF, STScI)

クローバーリーフ銀河と呼ばれるこの銀河はうしかい座にある。1年間に作り出す星は太陽1000個分に相当するが、これは我々のいる銀河系の300倍以上という激しいものだ。

クローバーリーフ銀河からの情報は、シアン化水素に特徴的な周波数の電波を検出することによって得られる。大量の高密度ガスが分布しているその領域からは、激しい星形成に伴う強力な赤外線の放射も観測される。この領域には太陽質量の100億倍という大量のガスが存在しているが、星形成率も大きいため、わずか1000万年程度でそのガスは使い果たされてしまうということだ。

クローバーリーフ銀河から得られたデータは、110億年前という宇宙初期の銀河について、その成り立ちや進化についての情報を与えてくれる。たとえば、遠い銀河には中心の超巨大ブラックホールをエネルギー源としてまぶしく輝いているものが多いが、果たしてその銀河の強い赤外線放射がブラックホールによるものなのか、またはスターバースト(爆発的な星形成)によるものなのかは、これまで疑問だった。クローバーリーフ銀河の発する強い赤外線は、ブラックホールからも多少発せられているようだが、主な発生源はスターバーストだ。このような例が見つかったことで、これまでの疑問に対しても興味深い答を提供してくれるだろう。

今後、初期宇宙の星形成研究については、「シアン化水素の検出」がキーワードになるようだ。

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