ボストン大学、地上望遠鏡により水星の模様をとらえる

【2000年5月29日 ボストン大学・宇宙物理学センター・画像科学チーム (2000/5/26) 5月31日 更新

ボストン大学・宇宙物理学センター・画像科学チームが地上望遠鏡を用いて水星表面の模様をとらえることに成功した。

ボストン大学がとらえた水星

ボストン大学がとらえた水星

太陽系第1番惑星である水星は、太陽系の惑星の中で最も太陽に近く、地球から見て最も太陽から離れて見える位置にある時期でも、日の出前または日没後のわずかな時間の低空に見えるだけだ。加えて、地上望遠鏡で表面の模様をとらえるためには、大気が良く安定した好条件を得る必要があり、観測チャンスはめったに無い。だが、大気の影響を受けないハッブル宇宙望遠鏡等の場合、搭載した高感度機器が過剰の光を受けて損傷することを避けるため、水星や金星のような太陽近傍天体の観測は禁止されている。

この水星表面の模様は、四半世紀以上前の惑星探査機マリナー10号によりとらえられているが、同探査機がとらえたのは水星の全表面のうち半分ほどに過ぎない。ボストン大学のチームは、マリナー10号によりとらえられていない空白領域を埋めることを目標に、地上望遠鏡による観測チャンスを狙ってきた。

そして1998年8月29日朝、ウイルソン山天文台にてめったに無い最高のコンディションを得、撮影に成功した。観測は日の出直後の時間帯、太陽光が大気を熱して大気を不安定にしてしまう前に行なわれた。観測ではデジタルカメラを用いて1/60秒露光の撮影を90分継続して行ない、34万枚の画像を得た。さらにそのうちから30枚から60枚程度の良像を選択し、それらを加算平均合成した後、最大エントロピー法などによる画像処理を行なって最終的な画像を得た。

水星表面の展開図

水星表面の展開図。右側はマリナー10号、左側はボストン大学の今回の観測による。黒い部分は未撮像。

ボストン大学のチームは、今年秋にも再度、水星観測に挑戦する。今年秋の挑戦では、水星に存在するはずの薄い大気をとらえることも目指す。

画像提供: ボストン大学