MGSが撮影した火星のさまざまな砂丘の姿(続報)

【2000年2月4日 Florida Online, 2000/2/2Malin Space Science Systems

1997年9月以来、火星周回軌道をまわりその表面のようすを撮影し続けているマーズ・グローバル・サーベイヤー(MGS)がとらえた砂丘の微細構造を紹介しよう。ここでは砂丘の活動性に注目してほしい。すなわち、一言で砂丘といっても、今でも活発な変化を見せるものもあれば、長期にわたって変化していないものもあるのだ。

Rabeクレーター内の砂丘とその活動の痕跡

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火星南緯44.2゚、西経325.6゚付近にあるRabeクレーター内部の砂丘を捉えた画像。吹き飛ばされた砂塵は画面右下方向に集められ、急勾配の面をつくっている。この面はslip faceと呼ばれ、その地域での風向きを知ることができる。砂丘の表面にはより細かなしわのような模様を見ることができる。これらの波紋は少なくともこの砂丘がここ数年で形成された、あたらしい構造であることを示しているという。

バイキングの画像との比較により火星の砂丘の動きを検出

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右の画像は1978年5月27日、バイキング1号が撮影したwestern Arabia Terraクレーター付近(火星北緯1.6゚、西経351.6゚)。その中の長細い矩形領域が今回MGSが撮影した画像である。両者は11火星年(おおよそ22地球年)以上経過しているにもかかわらず、そのなかの風紋の大まかな構造は変化していないことがわかる。地球上にみられる同様のサイズの砂丘と比較すると、火星の砂丘は地球のそれにくらべて変化の割合は小さいといえる。

黒色の縞模様をつくる砂丘

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western Arabia Terraクレーター付近(火星北緯10.7゚、西経351.0゚)にみられる砂丘。三日月状をした黒色の風紋と、白色をしたより細かな風紋が画面右上から左下に向かって連なっている。これら色の違う風紋の原因については、形成された年代が違うという説、風紋を構成する砂塵の化学組成が違うという説などがあるが、どれが正しいのかはまだよくわかっていない。

活動の少ない砂丘の上に重なる小さな縞模様

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オリンポス火山の周辺部に位置する火星北緯31.6゚、西経134.0゚付近。上下に直線状に伸びる砂丘の黒い縞模様の上に、小さな波のような波紋が刻まれているようすが画面下部をみるとわかる。この例では、下部の小さな波紋構造の方がより活動的な変化を繰り返していることを意味している。火星の砂丘はそのすべてが活動的である訳ではなく、場所によってその活動性にばらつきがあることがわかる。

溝のごとく生長した砂丘

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Herschel盆地(火星南緯15゚、 西経228゚)付近にみられる構造は、砂丘というより、もはや大地の溝というべき凹凸の激しいものとなっている。この領域では、おそらく砂丘のもととなる砂がさらさらとした粒子状ではなく、かなり固形化したものであると思われる。これにより風が刻んだ模様は崩されることなく、より深く削られた谷ができたと考えられる。このような構造は火星表面でも稀であり、このあたり一帯にしか見られないという。

砂丘模様の上にたくさんのクレーター

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Gusev Craterの北東付近(火星南緯12.5゚、西経181゚)の砂丘。よくみると、砂丘の模様の上に、重なるようにしてたくさんのクレーターがあるのがわかる。すなわち、この砂丘はかなり昔に形成されたもので、その後いくらかの隕石の落下によってクレーター が作られ、その跡がいままで残されているのである。このことからも、この表面は岩石に近いくらいに硬い物質でできていると思われる。

<関連ページ>
MGS MOC Releases MOC2-199 to MOC2-204, 31 January 2000