反復新星さそり座Uが12年ぶりに爆発

【1999年2月26日 VSOLJニュース(012)】

夜空に突如として輝き始める新星は、星の末期の大爆発である超新星とは異なり、近接連星系中の白色矮星の表面に相手の星から積もったガスが爆発的に核燃焼する現象と考えられています。爆発を起こした後も、相手の星からガスの流入が続けば再び新星爆発を繰り返すと考えられています。しかし、理論計算によれば、典型的な新星の場合、この反復の時間は数万年のオーダーとされており、同じ星が再度新星爆発を起こすことを見届けるには気の遠くなるような時間がかかると考えられています。

しかし、新星の中でもごくまれに、このような新星爆発を十年から数十年ごとに繰り返す天体が知られています。これらの天体を反復新星(*1)と呼びますが、現在までに銀河系の中にわずか7個しか発見されていません。

今回再爆発を起こしたさそり座Uも反復新星のひとつです。この星の最初の爆発は1863年 5月20日、著明な変光星観測者であったポグソンが9.1等星で発見しました。新星は急激に減光し、1週間後には12等星まで暗くなり、6月10日には13.3等星で視界を去りました。わずか20日程度しか見えていなかったことになります。この爆発はポグソン自身の記録しか残されていません。この星の2回目の爆発は1906年 5月12日に起こりました。この爆発は当時精力的にパトロール写真を撮っていたハーバード天文台の写真に記録されていたものが後の精査によって発見されたものです。次の爆発は1936年 6月22日に起きましたが、この時もハーバード天文台の記録写真から発見されました。1978年にウェビンクがパロマー写真星図との同定を行うまでどの星が爆発したものかもわかっておらず、多くの天文学者にとって約30年ごとに爆発する幻の星でしかありませんでした。

この星が初めて近代的な観測手法による研究の対象となったのは、1978年の極小での同定、そしてそれに引き続く1979年の劇的な再爆発以来のことです。この1979年の爆発は 6月23日に日本の成見、桑野、オーストラリアのクラッグによって独立に発見され、多くの望遠鏡が向けられました。この時も猛烈な速度で減光して、数日のうちに小望遠鏡の視界を去りました。爆発が期待されていた平均周期30年よりもやや遅く起こったこともあり、20世紀中にこの星の再爆発が見られることはあまり予測されていませんでした。

その予想を覆したのが1987年の爆発です。さそり座Uは黄道面に近く、近くを月が通過する時期は観測しにくいのですが、その困難も乗り越え、今世紀中の爆発の可能性は低いと見られていたなかでも精力的にモニターを続けていた、南アフリカのオーバービークによって 5月16日に10.8等で発見されました。このわずか8年の間隔の爆発は理論的にも新星反復間隔の最短に近いことや、発見時の光度が暗かったことから完全にガスがたまらない状態で爆発したのではなかったのではないかなど、大きな波紋を投げかけました。さらに天文学者を驚かせたのは、爆発を終えて静穏状態になっている時の詳しい測定によって、この星が周期約1.2日の食連星であることが発見されたことです。この観測の結果連星の大きさや伴星のタイプが判明し、さそり座Uは通常の新星に比べてこれだけ高い頻度で爆発をくり返しながら、非常に遠方の天体らしいことが明らかになってきました。理論的には、このような強烈な爆発を短い間隔で起こすためには、白色矮星の質量が理論的な上限値(チャンドラセカール限界と呼ばれる太陽の約1.4倍の質量)に極めて近いことが必要とされます。すなわち、もう少し白色矮星にガスがたまれば、白色矮星は自身の重力を支えることができず、Ia型の超新星爆発を起こすことが期待されることになります。この点から、さそり座Uは将来超新星爆発を起こすかも知れない有力候補として非常に注目されるようになりました。

今回の爆発の発見にも大きなドラマがありました。2月のさそり座は特に北半球からは明け方にしか観測できず、継続した監視がなかなか大変です。そのような状況の中でも監視を続けていたアマチュア観測家が世界に何人かいました。1987年の爆発を発見したオーバービークももちろんその一人ですが、南にあるこの天体の監視には南半球が有利なことから、南アフリカのモナードなども精力的な監視を続けていました。彼らは東の空にさそり座Uが昇ってくるやいなやその星野を確認していたのですが、ここに「緯度の魔法」が隠されていました。ほぼ同じ経度であっても北の地域ではこの天体はより遅く昇ります。2月25.04日UTに観測をしたモナードがまだ14.3等以下でまったく見えていない観測を行ったほんの4時間後、遅く昇ってきたドイツで監視をおこなったシュメアーが25.194日になんと9.5等まで明るくなっていることを発見し、VSNETに報告したのでした。わずか4時間でこれだけの増光があることが信じ難いできごとであったため、報告当初には懐疑的な見解も出されていました。確認観測の可能な時間帯や天候の関係から肯定・否定の観測がなかなかなされずやきもきされる時間が続きましたが、最初の確認観測がアメリカのショーによってなされた時点で、さそり座Uはなんと7.6等まで明るくなっていたのでした。その後ほぼ同時にオーストラリアのマティアッゾ、京都大学チーム、日本の観測者により複数の確認がなされ、本格的な観測がスタートしました。

VSNETに報告された発見前後の観測は以下の通りです。

      (世界時)
1999年 2月 23.98 日  14.3等より暗い (Monard, 南アフリカ)
24.1      13.1等より暗い (Overbeek, 南アフリカ)
25.04     14.3等より暗い (Monard)
25.194     9.5  (Schmeer, ドイツ, 発見)
25.563     7.6  (Shaw, アメリカ, 確認, from AAVSO Alert Notice)
25.625     8.0  (Matiazzo, オーストラリア)
25.726     8.42B (CCD, 清田, 茨城)
25.728     8.10V (CCD, 清田)
25.731     7.77Rc (CCD, 清田)
25.750     8.2  (前原, 埼玉)
25.803     8.0  (加藤, 京都)
25.833     8.2  (伊藤, 東京)
26.015     8.5  (Overbeek)
26.076     8.7: (Monard)
26.162     8.7  (Schmeer)

すでに暗くなりつつあるようです。

今回の爆発の驚くべき点はやはりわずか12年という反復新星にしては短い間隔にもかかわらず、この星の過去の最大光度を1等級も上回る極めて明るい爆発となったことです。この明るさはさそり座Uに対して過去に作られた理論モデルに修正を迫るとともに、Ia型超新星の起源に対しても多くの情報を提供してくれることになるでしょう。

この新星の過去の爆発はいずれも1日に0.5等を上回るスピードで減光していましたが、ここ数日であればまだ小さな望遠鏡で十分に見ることができるでしょう。

関連情報は以下のホームページにまとめられています(英文)

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/usco.html

(*1) recurrent nova の訳。「回帰新星」「再発新星」などと訳されることもある。