メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第25回 和のプラネタリウム、始動

星ナビ2007年2月号に掲載)

今回は、メガスターが初めて挑戦する「和のプラネタリウム」。東京日本橋で2006年12月から2007年3月まで公開しました。

メガスターのコンセプトは、日本人ならでは

プラネタリウムの歴史をひもとくと、1923年にドイツ・カールツアイス社で光学式プラネタリウムが誕生したとされる。IPS国際プラネタリウム大会のレポート(2006年10〜12月号)でもお伝えしたとおり、最近は、米国を中心にCGを直接ドームに投影するデジタルプラネタリウムが大流行である。乱暴な言い方をすれば、ドイツと米国がプラネタリウムという世界の主軸を握ってきたようにさえ感じる。日本には投影機の大手製造メーカーが2社もあり、設置館数でも世界第二のプラネタリウム大国と言われるが、現在世界を席巻しているデジタル化の波の中で、日本の光学式プラネタリウムの存在感について、いろいろ考えさせられることが多い。

そんなことを考えていたので、広告代理店から、日本橋で上映される「和のプラネタリウム」という企画案を受けたとき興味を持った。江戸文化を色濃く残す日本橋という場所柄もあるが、僕の生み出したメガスターという存在が、肉眼で見えない星により質感を追求するという点で、日本人ならではのものだという自覚を常々持ってきたからからだ。そんな和のハードウエアだから、和の番組を上映してみたい。だいたいそんな思いからこのプロジェクトが始まったのだった。

葛飾北斎という人物と宇宙

2006年12月15日にオープンした「日本橋HD DVDプラネタリウム」で上映されている「HOKUSAI〜北斎の宇宙」は、日本を代表する浮世絵師「葛飾北斎」にスポットを当てた、文字通り和のプラネタリウムである。北斎とプラネタリウムにどのような接点があるのか? 不思議に思う方もいるだろう。実は僕自身、北斎というテーマを与えられたとき、最初は作品イメージの見当がまるでつかなかった(笑)。

けれど、北斎という男と宇宙には密接なつながりがあった。少なくとも、ここで描かれるのは、単なる北斎の絵の展覧会ではない。北斎が描いたもの、描きたかったであろうもの、発見したかったであろうもの、彼が追い続けたこの世の万物の究極として存在した宇宙である。しかし、実際にカタチにするのは正直なかなか難しい。僕自身ではとても描ききれるテーマではない。だから宮本亜門氏に演出をお願いしたのである。どこまでうまく描かれるか、そこは亜門氏の手腕にただ期待するのみだ。

「北斎の宇宙」は、プラネタリウムの新しい可能性のページをまた一つ、切り開くことになるだろうか。この号が発売されるときには、すでに上映は始まり、番組への評価が聞こえてきていることだろう。様々な思いを抱きつつ、現在最終準備にいそしむ毎日である。

HOKUSAI〜北斎の宇宙

HOKUSAI〜北斎の宇宙 日本橋HD DVDプラネタリウムにて投影