Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2019年7月号掲載
アポロ50年の足跡を振り返る

「アポロ11号月面着陸50周年」にちなみ、出版界でも関連の書籍が刊行されている。何冊か集まったので、今月号からしばらく紹介していこう。まずは、アポロの活動を振り返る書籍から。

『月着陸船開発物語』 は、アポロ月着陸船の主任設計者が当時の計画全容を書いた記録。原書は著者が亡くなる1年前の2001年に出版された『MOON LANDER』。彼が勤務したグラマン社は戦闘機などを製造していたが、宇宙開発に着手すると、NASAの受注を目指し社内研究を始める。もちろん最初は成功しないが、やがてアポロ計画の主軸を担っていく。この本では、プロジェクトの研究・提案の段階から、設計・制作の詳細、月着陸の支援活動、さらに12号〜17号の現場までを赤裸々に著している。いずれも、日記を書くように心境を交えながら丁寧につづられ、どれほど困難な仕事だったか伝わってくる。そして、最終章の「結び アポロ計画が残したもの」を読むと、この計画に関わったすべての人の魂を感じる。

同じく、当時を解説する書籍が『NASAを築いた人と技術』 。アポロ計画期のNASAにおける、技術実践や組織文化をミクロな視点から描いた一冊。今回紹介するのは2007年に出た初版を増補した新装版で、補章として「アポロ計画から半世紀を経て」が追加された。著者は「NASAがアポロ計画期以降たどってきた道のりをみると、あらためてアポロ計画のNASAの時代的固有性が痛感される。それはやはり、特殊な歴史的空間だったのである」と述べている。宇宙開発が時代を作り、時代が宇宙開発の有り様を作るということか。

読者の中には、今年2月に公開された映画『ファースト・マン』を見た人も多いだろう。このたび、2007年既刊の『ファーストマン(上・下)』(ソフトバンククリエイティブ刊)をもとに、2018年刊行された原書の増補改訂版を訳出した文庫『ファースト・マン(上)』 『〃(下)』 が出た。“最初”に月に降り立った“人類”であるニール・アームストロングの本人公認伝記。それまでほとんどインタビューに応じることのなかった彼が、晩年になりようやく承諾し語ったノンフィクション。新版には、2012年に亡くなった彼の最晩年の姿も収められている。常に、自身のことを「偉大な宇宙飛行士」ではなく、「忠実なテストパイロットであり、エンジニアである」と言い続けた彼の人生が詰まっている。

そんな彼をはじめ、月面に降りた宇宙飛行士たちと宇宙船などを写した貴重な写真200点以上を収録した記録写真集が『MOONSHOTS』 。ハッセルブラッド社のカメラで撮影されたフィルム写真が、大判の紙面に美しく印刷されている。国際宇宙ステーションの活動まで続く、NASA宇宙探査の歴史を収めた永久保存版。

最後は、アメリカだけでなく世界中の宇宙開発計画を紹介した『宇宙プロジェクトがまるごとわかる本』 。1957年の人工衛星「スプートニク1号」に始まり、2020年「マーズ2020」まで約60年間にわたるプロジェクトを写真やイラストで解説。また、各国の歴代ロケットも図解で紹介している。この本を手元に置けば、いつどこでどんな宇宙プロジェクトをしたかがわかるビジュアル事典。

(紹介:原智子)