Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2017年2月号掲載
惑星と生命の関係 最新情報を探る

私たち人間は、常に“新天地”を求める性(さが)なのかもしれない。アフリカで誕生した人類は、歩いて地球上の各地に広がっていった。ヨーロッパで文明が栄えると、別の大陸を目指して船で冒険に出かけた。飛行機で地球上のどこへでも移動できる時代が来ると、次に地球を飛び出し月に向かった。いまでは「地球以外に人類が住める場所はあるのか」あるいは「地球以外に生命はいるのか」が、もっとも関心を集める研究のひとつになっている。『マーズ 火星移住計画』 は、は火星有人探査と移住プロジェクトの全容を、美しい写真やイラストで解説するビジュアル書籍である。人類は火星に行けるのか? 火星に住むことはできるのか? 火星に生命は存在するのか? 火星で生まれた子供たちの将来はどうなるのか? これらの疑問に答えてくれる専門家や関係者の話を多数紹介し、火星移住計画の詳細・課題・将来に向けたビジョンを示している。さらに、探査機が撮影した火星面の神秘的な風景や、開発が進む新型ロケット、火星基地の想像図など約200点のビジュアルを収録。そして、序文には映画『アポロ13』『ダ・ヴィンチ・コード』のロン・ハワード監督が登場している。連動企画で書籍と同タイトルのドキュメンタリードラマも制作され、公式サイトで配信中だ。

太陽系内で火星の次に“生命の可能性”が話題なのは、木星の衛星だろう。2016年9月には、NASAが「エウロパの表面から間欠泉のように水蒸気が噴出している可能性がある」と発表した。そうであれば、エウロパの表面下に液体の水が存在するわけで、地球外生命が存在する可能性が出てくる。今後、探査機などによる直接的な調査が行われ、いっそう研究が進展すると期待される。そんな生命の可能性を探究した啓蒙書が『私たちは宇宙から見られている?』 だ。欧州天文学会の重鎮である著者が、天文学や物理学はもちろん、生物学・化学・地質学を駆使し、さまざまな角度からアプローチしている。なんだか「地球外生命を探究すること」は「地球の知的生命体(私たち)を探究すること」に通じる気がしてくる。どこか宇宙の彼方から太陽系の第三惑星へ、生命体研究の視線が送られているかもしれない。

さて、昨今のアストロバイオロジー学の発展は、“系外惑星の発見”によるところが大きいだろう。とくに、地球サイズの「スーパーアース」も次々に発見され、生命の存在する可能性もぐんと上がっている。『系外惑星の事典』 は、「宇宙」「生命」というキーワードで系外惑星の理論や観測を大局的視点で捉えたガイドブック。既存の分野にとらわれず天文学・惑星科学・地球科学・生物学などの第一線で活躍する研究者約80人が、160の項目について執筆している。大学生でも読破するのは簡単でないボリュームなので、私たち一般読者は気になる見出しをランダムに読むだけでも興味深いだろう。

私たちが生きる地球のある太陽系について、あらためて最新情報を学んでみたいと感じる方も多いだろう。『最新 惑星入門』 は、は、本誌連載「三鷹の森」でおなじみの渡部潤一さんと渡部好恵さんが教えてくれる惑星科学の最新本。新書なので読みやすく、さらに各天体の観察方法も紹介する実践書でもある。惑星についてはもちろん、小惑星・彗星・惑星間塵などの太陽系小天体や太陽系外縁天体についても解説している。個人的にプッシュしたいのは、「流星」の章の「幻の流星群の謎を解く」項目。渡部さんの研究グループが解いた50年ぶりの流星群に、天文学の進歩とロマンを感じる。

最後に、これまで当コーナーで夏版と秋版を紹介してきた「よむプラネタリウム」から、第3弾の『冬の星空案内』 が刊行された。雪原の上に輝く明るい星座は、冬ならではのにぎやかさ。そんな写真からは、澄んだ空気の冷たさまで伝わってくる。巻末では、「星の明るさ」「星の色」「星の一生」について解説している。

(紹介:原智子)