初撮影から1年後のM87ブラックホールの姿

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2017年に初めて撮影された楕円銀河M87の超大質量ブラックホールが2018年に再び撮影された。リング構造の最も明るい部分の位置が約30度異なっており、ブラックホール周辺の物質が乱流状に振る舞っていることがうかがえる。

【2024年1月24日 イベント・ホライズン・テレスコープ

おとめ座の方向約5500万光年彼方に位置する巨大楕円銀河M87の中心には、太陽の65億倍もの質量を持つブラックホールが存在する。国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・コラボレーション」は2017年4月にこの超大質量ブラックホールの撮影に成功し、ブラックホールを視覚的にとらえる新時代が幕を開けた。

M87の超大質量ブラックホールを繰り返して観測することは、ブラックホールの存在をより確かなものにし、初撮影の結果を裏付ける上で不可欠だ。また、年を経て再観測を行うことで、ブラックホールのシャドウ(影)の周囲に安定して現れる明るいリング構造と、その周りで変動する複雑なガスの構造とを区別して調べることができる。

そこでEHTでは初観測から約1年後の2018年4月に、再び同ブラックホールを観測した。2017年からの大きな変更点として、新設されたグリーンランド望遠鏡が観測に加わったことがある。この望遠鏡がEHTの観測ネットワークの最北端に位置することで、画像の質が大幅に向上した。

グリーンランド望遠鏡 EHT望遠鏡配置図
(1枚目)2018年4月にEHT観測ネットワークに新規参入した口径12mのミリ波サブミリ波電波望遠鏡「グリーンランド望遠鏡」(提供:Satoki Matsushita)
(2枚目)EHT観測ネットワークに参加している望遠鏡の配置図。(EHT2018)2018年4月に行われたM87の観測に参加した望遠鏡、(EHT2017)2017年4月の観測に参加した望遠鏡(提供:NRAO/AUI/NSF; composition by M. Nakamura)
それぞれ画像クリックで表示拡大

また、メキシコの大型ミリ波望遠鏡では口径50mの巨大な鏡面全体を使った観測ができるようになり、感度が高くなった。さらに、データ記録速度が2倍向上したことで観測される周波数帯が2つから4つに増え、1日の観測でも独立した4つのデータで結果を検証できるようになった。

データ分析では初撮影に使用された手法に加え、天の川銀河中心のブラックホールの解析をもとに新たに開発された手法を含む、合計8つの独立した手法が用いられた。

こうして2018年のデータを分析した結果、2017年の時と同じ大きさの明るいリング状の構造が見られ、中心部は暗く、リングの片側が明るいという共通の特徴が確認された。中央の暗い部分は、一般相対性理論で予言されている「ブラックホールシャドウ」の存在を裏付けるものだ。また、リングの直径に変化が見られないのはブラックホールの質量と距離が数年間ではほとんど変化しないためで、これも一般相対性理論の予測どおりである。

M87のブラックホール
M87の超大質量ブラックホール。(左)2017年4月に取得された初画像、(右)約1年後の2018年4月に取得された画像。両画像に同じ大きさのリング構造がとらえられている。リング構造に囲まれた中央の暗闇がブラックホールシャドウに相当。リング構造の最も明るい場所は、2017年の画像では時計の6時の方向、2018年の画像では約30度異なる5時の方向にある(提供:EHT Collaboration)

一方で興味深い変化も確認されている。リングの最も明るい場所が、2017年の画像では6時の方向だったのに対して、2018年の画像では約30度異なる5時の方向にあることだ。これはブラックホール周辺の物質による乱流状の振る舞いが影響していると考えられるという。30度の変化があるものの、明るい場所が南側であるという点は同じで、ブラックホールの自転軸がほぼ東西方向であることを示唆している。それはまた、ブラックホールから離れたところで観測されるジェットの方向に近いものでもある。

M87の超大質量ブラックホールは2021年と2022年にも観測されており、2024年前半にも観測される予定だ。EHTは観測のたびに新しい望遠鏡を加え、観測周波数を増やして性能を向上させている。現在も新しい観測やデータ解析、結果の考察が進められていて、次々に研究成果が発表されるだろう。

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