JWSTが系外惑星を初めて直接撮影
【2022年9月8日 NASA JPL】
これまでに発見された系外惑星は5000個を超えるが、そのうち直接撮像された惑星は20個ほどしかない。中心の恒星が惑星に比べて明るすぎることが大きな理由だ。一般に惑星は可視光線より赤外線で強く輝いていると考えられるので、赤外線で観測すれば恒星と惑星のコントラストが弱まって見やすくなるはずである。
6月に科学観測を開始したジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は赤外線観測に特化しており、系外惑星の研究にも大活躍すると期待されている。初期リリース科学プログラムの一環として系外惑星の撮影が実施され、早速その成果が発表された。
JWSTは近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線装置(MIRI)を使い、ケンタウルス座の方向約355光年の距離にある恒星HIP 65426を公転する惑星、HIP 65426 bの姿を波長2.5~15.5μmでとらえた。波長5μm以上の赤外線で系外惑星が撮像されたのは今回が初めてだ。
(上)DSS画像におけるHIP 65426周辺、(下)JWSTがとらえた系外惑星HIP 65426 b。左から3.00、4.44、11.4、15.5μmの赤外線波長(擬似カラー)。★印の位置に中心星がある(光は除去されている)。惑星が点状に見えないのは望遠鏡の光学誤差のため(提供:NASA/ESA/CSA, A Carter (UCSC), the ERS 1386 team, and A. Pagan (STScI))
HIP 65426 bは2017年にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTによる直接撮像で見つかっている。今回の赤外線多波長観測により、質量は木星の6~8倍、半径は木星の1.45倍であることが示された。中心星からの距離は太陽~冥王星間の2倍もあるが、表面温度は摂氏約1000度と見積もられる。これほど熱いのは、HIP 65426 bが推定1400万歳と非常に若いからだ。
惑星HIP 65426 bは中心星に対して近赤外線では1万倍以上も暗く、中間赤外線で観測しても数千倍暗い。にもかかわらず中心星とはっきりと分離して撮影できたのは、中心星から大きく離れているからだ。同時に、今回の撮像でJWSTは予想を上回る性能を発揮しているので、さらに中心星に近く、質量の小さい系外惑星でも姿をとらえられるのではないかと期待が高まっている。
〈参照〉
- NASA JPL:NASA’s Webb Takes Its First-Ever Direct Image of Distant World
- ESA:Webb takes its first exoplanet image
- アストロバイオロジーセンター:ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮像した系外惑星の画像
- Nature:Webb telescope wows with first image of an exoplanet
- The Astronomical Journal:The JWST Early Release Science Program for Direct Observations of Exoplanetary Systems I: High Contrast Imaging of the Exoplanet HIP 65426 b from 2-16 μm 論文プレプリント
〈関連リンク〉
- The Extrasolar Planets Encyclopaedia
- NASA - James Webb Space Telescope:
- STScI:
- 星ナビ.com:
関連記事
- 2023/05/25 火山活動の可能性がある地球サイズの系外惑星
- 2023/04/21 アストロメトリと直接撮像の合わせ技で系外惑星を発見
- 2023/04/04 「ケプラー」発見の天体で最も近い地球型惑星
- 2023/01/27 銀河中心から外れた位置に見つかった巨大エネルギー源
- 2023/01/20 宇宙初期の銀河の大きさと明るさの関係
- 2023/01/17 光合成の蛍光から系外惑星の生命を探す
- 2022/12/22 低密度の系外惑星、「煮えたぎる海洋惑星」か
- 2022/12/21 JWST、生まれたての星を取り巻く有機分子をとらえる
- 2022/12/20 地球型惑星の大気は強い紫外線に負けない
- 2022/12/09 JWSTの画像に写っていた「赤い渦巻銀河」
- 2022/10/26 JWSTによる「創造の柱」の新しい描像
- 2022/10/17 連星のダンスで生み出された17重のダストリング
- 2022/09/29 JWST、海王星の環や衛星を撮影
- 2022/09/13 低温星のハビタブルゾーンで地球型惑星を発見
- 2022/09/13 惑星系に名前をつけよう!太陽系外惑星命名キャンペーン2022
- 2022/09/01 系外惑星の大気から二酸化炭素を検出
- 2022/08/15 形成中の惑星を取り巻く円盤からガスを初検出
- 2022/08/09 最遠銀河の候補をJWSTが撮影、赤方偏移16.7
- 2022/08/05 JWSTが車輪銀河を撮影
- 2022/08/02 すばる望遠鏡による低温の恒星を巡る惑星探し、最初の発見