すばる望遠鏡、生まれたての系外惑星の姿をとらえる
【2021年10月28日 すばる望遠鏡】
惑星は恒星に比べて非常に暗いため、太陽以外の恒星の光からその周りを回る惑星の姿を分離してとらえることは極めて困難だ。そのため、太陽系外惑星のほとんどは中心星の光(減光の様子やスペクトルの変化)を分析することで間接的に発見されており、直接撮像された例は少ない。地球から約420光年離れたおうし座星形成領域内の星をめぐる惑星2M0437 bは、その数少ない例に加わった。
2M0437 bの姿は、米・ハワイ大学のEric Gaidosさんたちの研究チームが2018年にすばる望遠鏡でとらえた。それから約3年間の追加観測で、この天体が確かに中心星2M0437の周りを回っていることが確認されている。
すばる望遠鏡の近赤外線分光撮像装置(IRCS)と188素子波面補償光学装置(AO)によってとらえられた2M0437系。惑星「2M0437 b」(画像中のb)は、主星から約100天文単位(150億km)離れた位置にある。主星の光はデータ解析でほぼ取り除かれている。十字のパターンは副鏡をささえるスパイダーの影響で見える人工的なもの(提供:国立天文台、アストロバイオロジーセンター、ハワイ大学)
中心星は200万~500万年前に誕生したばかりだと推定されている。つまり惑星の年齢も同程度ということになる。既知の系外惑星の中にはこれよりも若いものもあるが、いずれも質量が木星の10倍以上のため、惑星というよりも褐色矮星という可能性がある。その点、2M0437 bの質量は木星の3~5倍であり、確実に惑星と呼べる範囲だ。この質量は直接撮像で見つかった系外惑星として最小の部類でもある。
また、中心星の質量は太陽の2割以下だが、このような軽い恒星の誕生後わずか数百万年で巨大惑星が中心からある程度離れた位置に形成されるのは、従来の惑星形成理論では考えにくいという。記録ずくめな系外惑星2M0437 bは、それゆえに惑星形成の研究を進める上で重要な観測対象となりそうだ。
「惑星からの光を直接とらえることで系外惑星が発見された例はあまり多くなく、年齢が1000万年を下回る惑星にいたっては数例しか見つかっていません。今回発見された惑星はその中でも特に若く、非常にユニークな惑星系です。今後、すばる望遠鏡に加えて、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などによるさらなる観測で惑星の大気などを調べ、生まれたての惑星がどのような性質を持っているのか明らかにしたいと考えています」(自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター/国立天文台ハワイ観測所 平野照幸さん)。
〈参照〉
- すばる望遠鏡:すばる望遠鏡、生まれたての太陽系外惑星を発見
- W. M. Keck Observatory:Infant Planet Discovered By UH-Led Team Using Maunakea Telescopes
- MNRAS: Zodiacal Exoplanets in Time (ZEIT) XII: A Directly-Imaged Planetary-Mass Companion to a Young Taurus M Dwarf Star 論文
〈関連リンク〉
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