「はやぶさ2」C室試料も分析中、カプセルを相模原・科博で展示
【2021年3月10日 JAXAはやぶさ2プロジェクト】
3月8日現在、「はやぶさ2」は地球から約5600万km離れた位置にいて、拡張ミッションのための飛行を続けている。「はやぶさ2」が採取した小惑星リュウグウのサンプルは、現在JAXA相模原キャンパス内のキュレーション施設で画像撮影や計量などが続けられている。
3月5日の記者説明会では、2019年7月の第2回タッチダウンで採取された「サンプルキャッチャーC室」の試料の新たな画像が公開された。第2回タッチダウンでは、2019年4月の衝突装置運用で作られた人工クレーターのそばに降りて試料を採取したため、クレーターから飛び散って積もったリュウグウ内部の物質を回収できたのではと期待されている。
(上)第1回タッチダウンで採取されたA室の試料。(下)第2回タッチダウンで採取されたC室の試料。いずれも、大きめの粒子を個別に拾い上げた残りを3皿の観察用容器に移したもの。右下の数字は各容器内の試料の重量。容器の内径は21mm。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA、以下同)
第1回タッチダウン時の試料を納めた「A室」の場合と同じく、C室の試料もまず大きめの粒子が個別に拾い上げられた後、残りの物質がシャーレのような3皿の観察用容器に移された。個別に回収した粒子を除き、3皿の試料の重さは計1.51gだった。リュウグウ試料全体の重量は約5.4gであることがわかっており、A室の試料は個別回収分を除いて3.1gだったため、個別に拾い上げた大きめの粒子の総量は差し引き約0.8gということになる。
また、オーストラリアで回収された再突入カプセルについても、飛行後の解析が進められている。大気圏再突入の際、落下するカプセルの前側の空気は最高で1万度にも達するが、カプセルに搭載されていた「再突入飛行計測モジュール」のデータを分析したところ、カプセル内部は再突入の最中から着地まで、常温を大きく超えない温度に保たれていたことが確認された。
(左)落下するカプセルの進行方向側に装着されていた前面ヒートシールド。(中)背面ヒートシールド。ヒートシールドはパラシュートが開く際に本体から外れ、別々に着地する。(右)カプセルの本体であるインスツルメントモジュール。画像クリックで表示拡大
これら再突入カプセルやパラシュートなどは、3月12日(金)から3月16日(火)まで相模原市立博物館で(募集終了)、3月27日(土)から4月11日(日)まで国立科学博物館で公開される。
カプセルには2013年の「星の王子さまミリオンキャンペーン2」で募集した22万6800人分の名前やメッセージ、イラストなどのデータが記録されたメモリーカードが搭載され、「はやぶさ2」本体とともに約50億kmを飛行した。2月19日にこのメモリーカードが取り出され、現在もデータを正常に読み出せることが確認された。メモリーカードに記録されている名前やメッセージを検索できるウェブサイトも現在準備中とのことだ。
【録画】小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(21/3/5)
〈参照〉
- JAXAはやぶさ2プロジェクト:小惑星探査機「はやぶさ2」記者説明会 2021年3月5日
〈関連リンク〉
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