ニート彗星と明るさを競う?! 新発見のリニア彗星

【2002年11月11日 国立天文台天文ニュース(598)

10月中旬、リンカーン研究所チームにより「ふたご座」に発見された17.5等級ほどの明るさの移動天体が、その後の10月28日のイギリス、グレート・シェフォード(Great Shefford)のバートウィッスル(Birtwhistle, P.)による観測から、彗星状であることがわかりました。29日にホプキンス山(Mt. Hopkins)天文台でも確認され、新しい彗星としてC/2002 T7の認識符号が与えられ、通称はリニア(LINEAR)彗星となりました。

その後の観測や発見前の観測を加えて暫定軌道を求めたところ、まだ太陽からかなり遠く、木星軌道の外側にあることがわかりました。これほど遠いところで発見されるということは、彗星として大物である可能性が高くなります。遠くで発見された彗星としては、1995年に6.7天文単位で発見され、1997年には肉眼彗星となったヘール・ボップ彗星の例がありますし、最近では昨年の8月に発見されたニート彗星が10天文単位を越える場所で発見され、いまも近づきつつあるところです。

求められた軌道はまだ不確かですが、それによると、この彗星が太陽に最も近づくのは2004年4月末で、順調にいけば、ゴールデンウィーク前後に明け方の東の低空に、明るく尾を引く姿が肉眼で眺められると期待されています。ただ、北半球からは低空となって、条件はそれほど良くありません。

特筆すべきは、天文ニュース(511)でもお知らせしたように、この期間、明るくなると期待されているもうひとつの彗星、ニート彗星(C/2001 Q4)があることです。しばらくは南天にあるために日本からは見えませんが、2004年のゴールデンウィークあたりから夕方の南西の低空に見えるようになり、太陽に近づく5月中旬には、西の空に輝く肉眼彗星になっていると期待されています。条件に恵まれれば、2004年の5月上旬には夕方の西の空にニート彗星(C/2001 Q4)、明け方の東の空にリニア彗星(C/2002 T7)と一晩に二つの肉眼彗星が眺められるかもしれません。また、日本では不可能ですが、4月から5月にかけて、南半球では明け方の空に二つの彗星を同時に眺めることができそうです。もしかすると、夜空に二つの尾を引く大彗星の姿が眺められるのかもしれません。

国際天文学連合回報によるC/2002 T7(LINEAR)の暫定軌道要素は以下のとおりです。

(アストロアーツによる注):オリジナルのニュースではIAUC 8003で発表された軌道が掲載されていましたが、MPEC 2002-V39で新しい軌道要素が発表されているのでそちらを掲載します(角度に関する要素はすべて2000.0年分点)。

リニア彗星C/2002 T7の軌道要素
近日点通過(T)2004年4月23.7092日
近日点距離(q)0.615446 AU
離心率(e)1.0
近日点引数(ω)157.7582°
昇交点黄経(Ω)94.8582°
軌道傾斜角(i)160.5849°

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