ハッブル望遠鏡がとらえた「火星の素顔」

【2001年7月9日 STScI-PRC01-24 (2001.07.05)

現在地球に接近している火星を、地球軌道をめぐるハッブル宇宙望遠鏡 (HST) がとらえた。これは、地球からとらえられた火星像としては、これまでで最も美しいものといっていいだろう。

HSTがとらえた火星

火星はおよそ2年2か月ごとに地球との接近を繰り返す。そして、ちょうど今が接近中だ。今回の接近で火星が地球に最も近づいたのは、6月22日のこと。現在は、少しずつ遠ざかりつつある。

ところで、惑星の軌道は真円ではなく楕円であるため、最接近のときの距離は毎回少しづつずれていく。その周期は、約15年である。地球の軌道と火星の軌道が近い地点で最接近となるほど、最接近の際の距離が近く、15年のうちで最も近づく際の接近は「大接近」と呼ばれる。

前回火星が「大接近」となったのは1988年の接近の際だ。そして次に火星が「大接近」となるのは2003年の接近の際で、最接近の際には約5,600万キロメートルまで接近する。今回はその直前の接近にあたるため、最接近の際の距離が約6,700万キロメートルの「準大接近」となった。

そして、この「準大接近」の好条件の下、光学望遠鏡としては最高級の分解能を誇るHSTにより撮影されたのがこの火星像というわけだ。撮影日は最接近の直後にあたる7月26日である。火星表面の約16kmまでの構造がとらえられている。

この画像には、大きな砂嵐がいくつもとらえられている。最も大規模なものは、北極冠 (画像最上部) 上空を覆うもので、本来は真っ白な北極冠に褐色の輪が見られるのがわかる。そのすぐ下の部分も、やや小規模な砂嵐のせいで火星表面の模様がかすんでいる。画像右下部のヘラス盆地上空にも、大きな砂嵐がみられる。

天文学者らは、この画像から火星の地形のようすや気象などを分析し、2004年に火星に降下する2機の火星ローバーのミッションに役立てたいと考えている。

Image Credit: NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)
Acknowledgment: J. Bell (Cornell U.), P. James (U. Toledo), M. Wolff (Space Science Institute), A. Lubenow (STScI), J. Neubert (MIT/Cornell)

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