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天文雑誌『星ナビ』連載中「新天体発見情報」

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117(2014年11〜12月)

2015年5月2日発売「星ナビ」2015年6月号に掲載

超新星 in IC 2104=PSN J04561965-1548027

2014年11月13日、20時57分に掛川の西村栄男氏より「いつも大変お世話になります。星ナビの『新天体発見情報』を楽しく拝見しております。いろいろお心遣いいただきありがとうございます。今夜の捜索で、C/2013 A1彗星が引っかかりました。予報光度より明るいと思われますので、何か参考になればと思い報告させていただきます。光度は11月13日に10.1等でした。今夜は寒いですが透明度は良好です。急に寒くなりましたのでお体にご注意ください」という情報が届きます。氏には、11月14日20時57分に『画像、ありがとうございます。10等級だと充分新発見できるということでしょうか。空が良くなってきました。今後もがんばってください』というメイルを返しておきました。

西村氏のメイルにもあるとおり、11月10日からは多少の雲があるものの全国的に晴天が続いていました。特に11月13日頃からは、北にある高気圧から、この秋一番の寒気が入り、北日本では中旬に初雪となりました。しかし西高東低の気圧配置のおかげで、秋晴れとはいかないまでも太平洋側は晴天が続いていました。

11月15日夜23時に自宅に戻ると、山形の板垣公一氏より23時12分に「IC 2104に超新星状(PSN)を見つけました。報告を送りました」と携帯に連絡があります。『TOCP(未確認天体確認ページ)に入れましたか』とたずねると、「はい」とのことでした。板垣氏の報告は23時10分に届いていました。そこには「エリダヌス座にあるIC 2104に超新星を見つけました。明け方に気づいたのですが、確認撮影できませんでした。栃木にある30cm f/8.0望遠鏡を遠隔操作して見つけたものです。発見時刻は2014年11月15日02時54分、光度は16.1等です。2014年10月19日に行った極限等級が18.5等の捜索画像には写っていません。今夜(11月15日)22時33分に16.2等で確認しました。なお超新星は、銀河核から東に8″、南に8″離れた位置に出現しています」と報告されていました。板垣氏の発見画像を見ると、超新星の光度は16等級ですが、銀河の中心核に近く、その光芒の中にうずもれるように淡く写っていました。『よくこんなものを見つける……』と思いながら、ダン(グリーン)への報告を仕上げ、23時45分に中央局へ送付しました。

そのとき、板垣氏からの発見報告のメイルの上に氏から別のメイルが23時32分に到着していたことに気づきます。『何だ。これ……』と思って、文面を見ると「こんばんは。観測と測定の速さにビックリしました。ありがとうございます」というメイルが香取の野口敏秀氏宛てに送られています。『どういうこっちゃ……』と思いながら、さらに上を見ると、23時24分到着の野口氏のメイルがありました。そこには「板垣さん発見のPSNの観測報告を致します。11月15日22時47分に16.2等でした。板垣さん。99個目です。いよいよ王手ですね。なお、今回よりCCDカメラを変えました。超高感度になり撮影が今までの半分以下の時間ですみます。慣れない英語に苦戦しながら新しいシステムの構築を進めています」という確認観測がありました。『TOCPを見たのか。ずいぶん手早いなぁ……』と思いながら、氏の観測を23時49分にダンに送付しておきました。

夜半が過ぎて、11月16日00時00時45分に板垣氏より「発見報告を受けとり、その内容を確認した」という連絡があります。01時35分には、上尾の門田健一氏からも「25cm反射望遠鏡で11月16日00時20分頃に撮影しました。しかし、銀河中心が明るくPSNと分離できず測定は無理でした。ピクセル分解能が3″.3ですので、銀河中心のピクセルとPSNの重心に必要なピクセルが重なっています。ただ、発見位置に銀河中心から出っ張った恒星らしき像が確認できます。なお、近隣の住宅建設がどんどん進んで、視界が減るだけでなく外灯も増えて、空の条件はますます悪くなってきました。冬場の空で露出時間と枚数を増やしても、19等級くらいの彗星がたぶんギリギリとなりました」という報告があります。私には超新星を充分確認できる画像と思われましたが、慎重な門田氏のことです。「これでは確認したことにならない」と思ったのでしょう。

なお、この天体は中央局から超新星符号が与えられませんでしたが、海外で11月20日にスペクトル確認が行われ、Ia型の超新星の出現であったことが、ATel No.6717に公表されています。

いっかくじゅう座の矮新星 PNV J06483343+0656236

11月中旬から続いていた晴天も、途中11月17日頃に一旦途切れました。しかし下旬からは、再び晴天が続くようになりました。そんな時期、11月23日朝04時30分と04時49分に掛川の金子静夫氏より携帯に連絡があったようですが、遠いところでベルが鳴っていたために電話に出ることができませんでした。しかしこのときには、03時36分にメイルで届いた金子氏からの報告の処理をすでに始めていました。そこには「Canonデジタルカメラと200mm f/2.8望遠レンズで2014年11月22日22時39分にいっかくじゅう座を撮影した捜索画像上に、11.6等の増光天体を見つけました。画像の極限等級は14等級です。この星は、11月14日と18日に撮影した捜索画像上には見当たりません。また、各種のカタログ上にも記載されていません」とありました。氏からは、04時15分にその発見画像も届きます。画像を確認して、氏の発見を04時51分にダンへ送付しました。その報告を見た金子氏からは約1時間後の05時45分に「お忙しいところ対応いただき、ありがとうございます。何度も電話をかけてすみませんでした。その後も、4時16分頃にも4枚撮影し、星像を確認しています。天頂付近にあるために、夜明けまで写せそうです。DSS(Digitized Sky Survey)を拡大すると、この位置に暗い星がありそうに見えます。とりあえず増光天体が確実に存在することが確認でき、安心しました。なお、今日は紅葉を見にドライブの予定です。この辺で一休みいたします。ありがとうございました」というメイルが届きました。

発見報告を見た門田氏から06時16分にその観測が届きます。氏のメイルには「金子さん発見の新星状天体(PN)ですが、25cm f/5.0反射望遠鏡で11月23日05時17分に観測しました。光度は12.0等でした。なお、USNOカタログには、ほぼ発見位置に17等級の恒星があります」と氏の調査が書かれてありました。さらに06時21分には、群馬県嬬恋村の小嶋正氏から「この星は、Canonデジタルカメラと85mmレンズで11月21日03時12分頃に撮影した極限等級が13等級の捜索画像上には写っていません。しかし、11月23日04時32分には11.5等でした」という報告もあります。そして、山形の板垣公一氏からも12時14分に「11月23日05時33分に撮影した画像では、その光度は11.9等であった」という観測も報告されます。これら三氏の観測は、13時21分にまとめてダンに送付しました。

その夜(11月23日)には、香取の野口敏秀氏からも「23cm望遠鏡で11月23日20時54分に撮影した画像では、PNは12.4等です。発見位置には、DSS(1998年)に17.1等の恒星があります」という観測が報告されます。多分、門田氏の指摘した星と同じもののようです。氏の報告は、11月24日00時07分にダンに送っておきました。11月25日00時32分には、金子氏より「夜明け前の時間帯にもかかわらず、多くの方に確認撮影をしていただきまして、ありがとうございました。報告した天体を短時間の内に確認していただけるのも、中野さんの迅速な対応のおかげと、いつも感謝しております。今回は、私にとって3つ目の矮新星となりそうです。このことは、新星よりも矮新星の出現の方が多いことを示しているのでしょうか。板垣さんの大口径で撮影した画像を見ると、確かに今回の星がDSSに暗く写っている星のように思えます。野口さんの比較画像が参考になりました。久しぶりに撮影した冬の銀河でしたが、幸運にも最初に見い出すことができました。翌23日は、睡眠不足でしたが、紅葉を見ようとドライブに出かけていました。24日は仕事でしたので、お礼が大変遅くなりました。今後とも、よろしくお願いいたします」というこの星の近況が連絡されてきました。

超新星 2014ef in NGC 309

12月中旬は、再び寒波が来襲しました。特に12月17日には当地でも氷が張り、翌18日には霰と初雪が降りました。ただ、私の小さいときは、ぶあつい氷が毎朝張っていました。やはり温暖化が進んでいるのでしょうか。そんなとき、12月13日23時14分に山形の板垣公一氏より携帯に連絡があります。氏は「NGC 309に超新星状天体を見つけた。今、送りました」と話します。メイルを見ると氏の発見報告は23時12分に届いていました。『あぁ、届いていますよ』と答え、電話を切りました。氏の報告は「栃木にある50cm f/6.8望遠鏡を遠隔操作して、くじら座にあるNGC 309を2014年12月13日21時27分に撮影した画像上に17.9等のPSNを見つけました。11月22日に撮影した極限等級が18.5等級の画像上には見られません。発見後、10枚以上の画像を撮影しましたが、移動はありませんでした。なおPSNは、銀河中心から西に44″、北に47″離れた位置に出現しています」となっていました。氏の発見画像を見ると、超新星は、銀河からかなり離れた位置に淡い姿で出現していました。この氏の発見は23時44分にダンに送付しました。

すると、その15分後の12月14日00時00分に香取の野口敏秀氏から「NGC 309のPSNを確認しました。12月13日23時02分に18.2等でした。ついに100個到達ですね。おめでとうございます。なお、12月9日にこの銀河を撮っていましたが、極限等級約18等級のため、画像が浅く存在は確認できませんでした」という超新星を確認したメイルが早々と届きます。氏の報告は00時33分にダンに伝えました。

ところでこの時期は、ふたご座流星群の極大日頃でした。この日(12月14日)の朝07時09分に、神戸の豆田勝彦氏より、その第一報が届きます。そこには「ふたご群の速報です。月出前12月13日19時20分から23時00分の220分間に132個、月出後12月14日00時00分から05時50分の320分間に260個でした。観測は室戸で行いました。ZHRにして安定した80個〜90個の出現でした。しかし、ピークはまだ先のようです」という観測報告が届きます。次の朝、12月15日03時14分には「12月14日23時台に160個を数えました。月出後の薄雲に妨げられそうですが、悪い空でもHR 100近い出現を継続しています。火球が凄くて、21時から24時までに30個を近くを見ました。01時台には半月クラスの大火球が出現しました。火球の夜です」という連絡があります。03時21分には豆田氏に『報告ありがとう。今年の出現はすごいのですね』という返信を送っておきました。その朝には、氏からさらに二度の報告があり、12月15日17時50分には「12月14日23時から24時に極大となり、1時間当たり160個のふたご座流星群が出現しました。火球もこの時間帯だけで19個が出現しました。こんなふたご群は見たことがありません。室戸の空は、月の出前は黄道光が冬の天の川くらいに輝く素晴らしさでした」という最終結果が届きます。この氏の観測は、19時27分にダンに送っておきました。

さて、板垣氏が12月13日に発見した超新星状天体は、発見後1か月半が経過した2015年1月25日16時42分到着のCBET 4059に公表されます。そこには、海外や国内で行われた他の観測も公表されていました。この超新星は、12月16日にアパッチポイント天文台の3.5m望遠鏡でスペクトル観測が行われ、極大数日が過ぎたIb型の超新星の出現であったことが紹介されていました。

15P/フィンレイ周期彗星

12月18日早朝、ドイツのメイヤー氏が主催するCOMET-ML上に、この彗星が8.7等まで増光していることが伝えられます。ただ、ICQ Comet Handbook(HICQ 2014)にあるこの時期の予報光度は11.0等でしたので、実際にはそれより2等級ほどは増光したことになりますが、そんなに大きなバーストではなかったようです。

日本では、坂戸の相川礼仁氏が早々と観測を行ったことが星の広場電子版HAL 190(12月18日20時43分到着)に掲載されます。氏の報告では「15P/フィンレイ彗星がバーストしたとの情報があったのでさっそく見てみました。薄明が終わる20分以上前に20cm望遠鏡を予報位置に向けたところ、すぐにその視野に集光のある大きなコマが入ってきました。光度は近くにある恒星9.06等並みか、わずかに明るい程度で、12月18日18時07分の眼視全光度を8.9〜9.0等と見積もりました。視野の極限等級が11.2等の空でしたので、さらに明るいのかもしれません。歴史的な経緯のある彗星で一度は見てみたいと長年思っていました。それが叶って感慨深いです」という報告でした。続いて12月19日11時41分には、山口の吉本勝己氏からも「COMET-MLでバーストの報告があった、15Pのデジタルカメラによる光度観測を報告します。画像は周南の福永泰俊氏に依頼し、昨夜に撮影してもらいました。光度測定は私が行いました。12月18日18時28分に9.9等でした。彗星は典型的なアウトバースト形状をしており、眼視では8等級ではないでしょうか」という観測報告が届きます。また、群馬の小嶋正氏も新星捜索中にこの彗星を捉えたようです。12月23日21時53分にその画像が届きます。

相川氏はその後も観測し、その眼視全光度を12月19日に9.2等、23日に9.4等、24日に10等、25日に9.6等、1月7日に9.0等、8日に9.1等、9日に9.3等、10日に9.7等、12日に9.8等、13日に9.9等と報告しています。また、吉本氏からも12月21日に10.1等という観測が報告されました。

彗星は、その後一旦減光しましたが、1月中旬になって再び増光したことが観測されます。その眼視全光度を生駒の永島和郎氏が1月16日に8.4等、吉本氏が1月17日に7.5等、19日に8.8等、相川氏が1月17日に7.3等、18日に7.8等、19日に9.0等、20日に8.9等と観測し、さらに3等級ほど増光しました。増光頃のCCD全光度も12月19日に10.8等(大島雄二;長野)、23日に10.1等(門田健一;上尾)、23日に11.5等(高橋俊幸;栗原)、11.2等(大島)、27日と28日に11.4等、1月1日に11.4等(高橋)、2日に10.9等(門田)、5日に11.2等(高橋)、10日に11.1等(杉山行浩;平塚)、11日に10.2等(門田)、13日に10.5等(関勉;芸西)、10.4等(安部裕史;八束)、18日に7.7等(門田)、8.6等(大島)と、CCD全光度でも7等級まで明るくなりました。

2014年末が近づいていた12月27日21時52分に山形の板垣公一氏は、さんかく座にあるM33に17.2等の暗い新星状天体を発見します。これを知った香取の野口敏秀氏から12月28日11時38分に「TOCPに掲載された板垣さん発見のM33のPNですが、12月25日夜に同位置を撮影した画像(極限等級18.8等)を調べてみましたが、この時点では出現していませんでした」という報告があります。さらに野口氏からは「12月30日17時44分に観測しました。光度は17.2等でした」という観測報告も届きます。それを知った板垣氏からは、翌日12月31日07時23分に「野口さん。観測ありがとうございます。06時まで栃木の望遠鏡を遠隔で捜索していました。ところで、この地は何故か昼も夜も積雲が発生しやすい場所です。頭上にだけに発生するのです。近くに山もないのに不思議です。10年前の開設後にすぐに、あれ……と気づきました。あと5kmほど南か東に行けば、状況はまったく違います。少し北でも条件が良くなります。そんなことで、遠隔操作の機器設置時には移動を考え、まわりをだいぶ探しましたが、総合的に良いところがなく、あきらめて今の地にセットした次第です。でもここは「雲発生」以外は満点の場所なのです。無人駅から近いし、見晴らしが良く、空は暗いしコンビニがあるし、ネットがすごく速いし、地主さん、そして近くの方々から良くしてもらっているし……。以上、年の瀬の今年最後の愚痴でした。来年もよろしくお願いいたします」というメイルが届き、この年のお開きとなりました。

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